その6つの数とは、物質間の相互作用の強さを表す「N」、原子の組み立てをつかさどる「ε」、宇宙崩壊の鍵を握る「Ω」、1998年に発見され大反響を呼んだ反重力「λ」、宇宙の構造を決める「Q」、そして我々の世界の次元を決定する「D」である。宇宙物理学は我々の存在がこの6つの数の微妙なバランスの上に成り立っていることを明らかにした。もし、これら6つの数が現在の値と微妙にずれていたら、我々の存在はない。
「わたしたちを支配し、この宇宙をつかさどっている力とは何なのだろうか。それをこれから専門用語を使わずに、説明していきたい」という冒頭の言葉どおり、本書では、6つの数から広がる宇宙論の世界を宇宙論の権威マーティン・リースが、数式や専門用語を用いずに、科学者の横顔、歴史的背景や逸話などを豊富に織り込みながら解説していく。解説は地球外生命体や生命の起源についても触れており、宇宙という観点から改めて「当たり前のようで当たり前ではない存在」である地球、そして生命について考えさせられる。
本書は「偶然の一致か、神の意志か、それとも多宇宙か」で締めくくられる。6つの数の存在、そして、そのバランスはどのようにして実現されたのか。我々の世界の存在の根底にあるものとは何か。6つの数の関連はいまだ解明されていない。(別役 匝)