ティーン・アイドルの座をめぐって大昔から繰り返されてきたレースに、90年代後半になって参戦したイン・シンク。彼らをもっともよく言い表しているのは、ブルース界の賢人ウィリー・ディクソンによる次の言葉だ――「大人の男は分かっていないが、小さな女の子は理解している」。この5人組の軽快なダンス・ポップは、徹底した操作によってポスト・ニュー・ジャックのリズムとクリーミーなハーモニーを結び付けたものであり、彼らの専売特許とは言えない。しかし、肝心なのは音楽的なオリジナリティーではないのだ。“オフィシャル・ホーム・ビデオ”と称された本作『'N the Mix』は、ほとんどが10代の女性と言われる若いファンたちのために、ひたむきな熱気に包まれた5人のポートレイトを描き出す。ジャスティン、JC、ランス、ジョーイ、クリスは、観客の前で歌い、音楽的な近縁関係にある人々について考えをめぐらせ、楽屋をうろつく。
   この甘酸っぱい75分間の作品を見て、親御さんたちは、長い歴史を持つアイドル雑誌「Tiger Beat」のプロフィール記事を思い出すことだろう。メンバーひとりひとりのデータが箇条書き形式で出てくるところなど、まったく同じだ。データの内容は、フル・ネーム、生年月日、“好きなもの”（不可解な回答が続出する中、“ハード・ロック・カフェのメニュー”というのが出てくるのは傑作だ）など。ドキュメンタリー映像の合い間には、イン・シンクの最初のヒット曲である「I Want You Back」と「Tearin' Up My Heart」の別バージョン演奏、それに続く2曲のビデオ、さらなる2曲のスニーク・プレビューが散りばめられている。加えて、目まぐるしいカット割りながら、厳密に振り付けされたおなじみのアスレチック・ダンスをたっぷりと収録。例によって、スポーツウェアにファッショナブルなロゴという格好で踊っている。（Sam Sutherland, Amazon.com）