しかしこれはスペイン語の基礎文法を修めていない読者にはあまり高い効果が見込めない本だと思います。
前書きに「なるべく文法知識に頼らなくても話せるような簡単な会話例を盛り込みました」とありますが、外国語の学習はまず文法をきちんと修めてから前に進むほうがずっと効率的です。
文法を修めずに文章を理屈ぬきで丸暗記していくというのは、よほど記憶力の良い人ならまだしも、普通の人にはむしろ激しい苦痛を伴う、効率の悪い学習法だと思います。
特にスペイン語は英語と異なり、動詞が多様な活用を見せますから、文法を学ばずに文章を丸暗記するのはまず不可能です。むしろ文法という理屈のほうを丸暗記することで初めてその多様性に規則があることが見えてきて学習が容易になります。
第一段階で文法をきちんと身につけ、さらに第二段階で多彩な例文に当たりながら語彙を増やしていく、これが外国語学習の王道だと思います。私自身も文法を徹底的に修める方法から入って、半年でスペイン人とメールのやりとりが出来るまでになりました。
ですからこの本はスペイン語学習の第二段階くらいに利用するには大変価値のある本だということを強調しておきます。
なお、スペイン語学習の第一段階としてお勧めの入門書に「CDレッスン驚くほど身につくスペイン語」(ルイス・セボジャダ著/高橋書店)と、「スペイン語をはじめよう!―基礎から日常会話までマスターできる入門書」(大岩功著/ノヴァ)があります。どちらもCD付きです。