ダイレクト文藝マガジン 002号「藤井太洋インタビュー / KDPノウハウ本メッタ斬り!」
価格: ¥0
キーワードは「ダイレクト」。
商業誌はもちろん、同人誌での出版経験さえもたなかった人々が、
電子書籍をきっかけに本を出しはじめ、しかも、あたらしい読者を着実に獲得しはじめています――。
執筆・編集・デザイン・プロモーションといったすべての工程に直接関わり、
スマートフォン・タブレット・電子書籍リーダーを通じて読者に直接届けることができ、
そのフィードバックを直接受け取って次の創作に活かす。
この循環をダイレクトに、かつスピーディに行えるあたらしい出版の可能性にいち早く気付き、
その魅力にとり憑かれた人々が、あたらしい「文藝」の世界を拓こうとしています。
KDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)で、いま起こっているムーブメントの価値の源泉は、
個人(自己)で出版するかどうかではなく、中間をはさまずにダイレクトに出版できるかどうか、というところにあります。
ダイレクト文藝マガジンは、ダイレクト出版であたらしい文藝を拓こうとする人々を応援するためのメディアです。(発行人・佐々木大輔)
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【002号】目次
1. 特集1 藤井太洋インタビュー 最新短編『コラボレーション』とコラボレーション(共作)の可能性
※藤井さんのインタビューは「無料サンプルを送信」で全文を読むことができます。
2. ショートショート『ポケットティシュー配りの少女』
3. 特集2 KDPノウハウ本メッタ斬り! 前編
※レビュー対象作品
■川村康宏『アマゾンで売る! 一番簡単な電子書籍の作り方』
■糸数一郎『1円も使わず素人がスピード出版。電子書籍を無料で10分程度で(以下、タイトルが長すぎるので省略)』
■小林啓倫『キンドルで本を売る。―キンドル・ダイレクト・パブリッシングを通じた個人出版のアドバイス』
■伊藤純『電子書籍を個人出版しよう』
■朝倉徹也『私はこうしてアマゾンから電子出版しました!』
■クリックおきなわ『かんたん!Kindle自費出版 とにかく手軽にキンドルで本を売りたい方へ』
■吉田顕一『朝起きたら作家になっていた - Amazonキンドル自費出版への道 (KTRIビジネス日本語版) 』
■戸川博『日本語縦書きKindle本の作成手順』
■福浦一広『コンテンツ制作者のためのKindle表示チェッカー縦組編』『横組編』
■小林徳滋『縦組みにおける英数字正立論』
■高村太郎『一太郎 承 を利用したキンドル出版の方法』
■山本文雄『amazonで本を出そう あなたも作家になれる (kindle 1dollarBooks)』
4. Q&A ゆとり教育の犠牲者でもわかるKindle本の作り方を教えてください
5. お父さんのためのダイレクト出版ニュース講座
6. 今週のKDPニューカマー
7. ダイレクト作家の近況まとめ
8. 編集後記
9. 次回予告(という名の企画放談)
10. 奥付
収録文字数 およそ5万字
読了にかかる目安 1時間40分(500字/分の場合)
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このKindle本は、週刊メルマガ「ダイレクト文藝マガジン」のバックナンバーです。
お申込みいただくと「月額525円」で「4冊分」が届きます。毎号EPUBデータつき。
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ここからは、ガストの充実朝定食について語る。
ガスト。ファミレスだ。おれの近所では朝6時からモーニングが始まる。
「目玉焼きセット」なかなか良い。厚切りトースト1枚(マーガリンとイチゴジャム付き)、
目玉焼きが2つ、ちょこっとレタスサラダ、スープ、さらにドリンクバー付きで税込418円。安い。
カプチーノを好きなだけ飲めるので満足感が高い。いつも3杯くらい飲んじゃう。
ドリンクバーが目当てならば、うってつけのモーニングメニューがある。
トースト&ゆで卵セット。税込299円。
厚切りトースト1枚(マーガリンとイチゴジャム付き)、ゆでたまご1個、ドリンクバー付き。
コンビニでパンと缶コーヒーを買うくらいなら、朝のガストに行ったほうが満足度は高い。
ひとつだけ不満がある。スープの貧弱さに我慢ならないのだ。
コンソメ味。寸胴鍋にたっぷり入っている。量は十分。だけど具が少ない。
状況を説明する。鍋底には具がたっぷり沈んでいる。それをお玉で汲み取ろうとしても捕獲できないのである。
鍋底のワカメやモヤシに狙いをさだめてお玉を沈めても、汲み上げる頃にはお玉にはほとんど残らない。
ガストへ行くたびに、今度こそはと思う。いつも惨敗。家族に乾杯。ガストが仕掛けた功名な罠。
充実朝定食。和食のモーニングメニュー。税込681円。
朝飯にしては高い。だが満足度も高い。断言する。ご飯を大盛り指定できる。もちろん無料だ。
メニュー内容を説明する。
ご飯、味噌汁、目玉焼き1個、唐揚げ2個、細長いソーセージが1本、小盛りのキャベツ。
ゆでたほうれん草、しば漬け、海苔。醤油。これだけ出てくる。
ほうれん草の小鉢は量が多い。もとは冷凍野菜だと思う。でもうまい。
おひたしじゃない。単にゆでたものだから歯ごたえがある。カツオブシがのっている。醤油を垂らして食う。
レタスやキャベツだけでは野菜を食った気がしない。ほうれん草は免罪符である。
あーきょうも外食してしまった。でもほうれん草を食べている。緑黄色野菜。
おれは野菜を食べているのだ。許せる。ほうれん草のおかげで外食している自分を許せる。
充実朝定食。その名にたがわず充実している。店員が運んでくる。背中を見送りつつ焼き海苔をセロファンから取り出す。
小さな短冊状のものが4枚か5枚。いつも数え忘れる。小皿がある。醤油を垂らす。
ついでにほうれん草の小鉢にも垂らす。量を間違えてはいけない。醤油のかけ過ぎに注意。高血圧になる。
醤油が少なすぎても味気ない。ガストのほうれん草。繊細な味付けが要求される。
塩をふる。唐揚げに味付けする。かけなくても食えるが、おれは唐揚げに塩をふる。
箸を手に取り、白米を口にする。近所のガストは飯を炊くのがうまい。おれ好みの硬さに炊いてある。
味噌汁をすする。口のなかで白米がほどける。
細長いソーセージをかじる。塩をかけない。もともと味が濃いからだ。
塩気が足りなければ皿の上に散らばっているのをつける。さっき唐揚げに振りかけたやつだ。
テーブルの上にも散らばっている。塩の野郎が。いつもだ。
白米を食う。唐揚げをかじる。いつも揚げたてだ。口の中を火傷しそうになる。
ガストの唐揚げ。噛みしめたときの肉離れが悪い。褒め言葉である。食べごたえがある。肉を食っている実感がわく。
白米を食う。味噌汁をすする。ほうれん草に箸を伸ばす。
カツオブシも含めて緑色の野菜を口に放り込む。噛むとバリバリ。小気味良い音がする。大げさな音をたてて食う。
半茹でといっても差し支えない硬さ。これが好きなのだ。野菜を食っている気持ちにひたれる。
ガストの充実朝定食で、おれは健康になる。
焼き海苔の出番だ。シーウィード。海の雑草。小さな短冊状のものを1枚。手をつかって取る。
箸は使わない。白米の上にそっと載せる。ふたたび箸をとる。海苔で白米を巻きこむ。そのまま持ち上げる。
あらかじめ醤油を垂らした皿に運ぶ。ひたす。口に運ぶ。うまい。おれは焼き海苔をこのようにして食う。美味しんぼの影響である。
唐揚げで白米を食う。ほうれん草で食う。ソーセージで食う。しば漬けをつまんで口直し。
白米を食う。焼き海苔で食う。味噌汁をすする。飯茶碗の中身がだいぶ減っている。いよいよ目玉焼きの出番である。
黄身は固めの半熟。たいていの場合、申し訳程度の半熟。
たまに理想の半熟目玉焼きがやって来る。半固体状のものだ。おれは快哉を叫ぶ。やった!
目玉をくずさないように気をつける。左手をつかって皿を持ち上げる。優しい箸使いで目玉焼きを白飯の上にスライドさせる。
黄身を仰向けにして崩さないように。おごそかに、しめやかに。ささやかな戴冠式である。
目玉焼き丼の完成。箸の先っぽを黄身に近づける。表面をそっとかき乱す。5割半熟ならトロリと黄身が流れだす。
焦るな。おれは醤油の瓶を手に取る。そっと黄身にたらす。混ざる。独特の色彩が生じる。旨そうな色をしている。
目玉焼きをひっくり返す。よい具合に醤油と混ざりあった卵黄液が白飯にしみていく。
目玉焼きの裏面。じつに無様である。火災に見舞われた式場から逃れてきた煤まみれの花嫁。そんな風情である。
意味がわからない。うまいこと言おうとして失敗した。
やや焦げている白身の表面を眺めながら、おれは残虐な箸づかいでかき乱す。ぐぢゅぐぢゅにする。
まざりあう黄身と白身と白米。部屋とYシャツと私。おさない、かけない、しゃべらない。
おれは食う。ガストの充実朝定食を。一心不乱に。
味噌汁を飲み干す。しば漬けをかきこむ。完食する。ごちそうさま。
そのあとはドリンクバーのお時間だ。カプチーノだけ飲む。
シュガーは2本。「先入れ」と「後入れ」がある。
あらかじめシュガーを入れたカップに注ぐパターン。
あふれそうな泡の上からシュガーを加えるパターン。
1杯目は先入れ。2杯目はシュガー無し。〆の3杯目は後入