88年の作品の復刊
★★★★★
88年の作品の復刊だそうです。
大江健三郎の作品というのは、すべてが作家自身の身を削ったかのような
血のにおいのするようなものばかりだと思っていましたが、そうではなかったんですね。
とても真っ当なメッセージ性のある(それがいいというわけではないけれど)
好感の持てる作品でした。しかも面白い。
すべての人がこんなカラフルな思春期を過ごせるわけではないですが
その時期に経験して、乗り越えなければならないとされていること
またそのためのヒントがきちんと描かれているなと感じました。
それにしても私を含め今の世代の人たちに、こんな真っ当な思春期を過ごした
経験のある人なんているんでしょうか(笑)??
若い人に向けた、という作家の意図もあるのでしょうか。
他の作品に比べて、あのこねくり回したような日本語も影を潜めています。
それでもなお、一般の小説に比べたら難しいよなぁと思うのですが(笑)
ちなみにディッケンズの骨董屋が物語の根幹にありますが、読んでいなくても
十分わかると思います。(が、これは私が大雑把だからかも)