美しい家具と西洋建築
★★★★☆
西洋家具の移り変わりを追う事は、日本の西洋建築(所謂洋館)の変遷を辿ることにつながるわけで、その密着ぶりを読み進めていくうちに感じました。
とにかく理屈抜きに掲載されている家具や建物の写真の美しさに魅せられました。昔の日本人の美術工芸へのこだわりと技術は相当な水準に達していましたね。
最初のカラー頁から目を奪われました。掲載されている旧赤坂離宮の家具の美しさは、現代でも通用する高貴さを持っています。ほとんどフランスからの輸入品だそうです。別の頁に書かれてある明治天皇の気品ある椅子と上品な卓掛けは、今でも風格を持って鎮座しているかのようです。
アメリカ帰りの新島襄の家、明治宮殿の和洋折衷、片山東熊が設計した赤坂離宮、円山公園にある長楽館、等の建造物と内部に置かれている西洋家具の取り合わせの美しさは格別で、実物を見なくてもその佇まいには感心しました。実に見事なものです。
海軍鎮守府長官官舎の金唐紙と置かれている家具や、アール・デコ住宅の典型となった朝香宮邸の戦前の写真から見る室内装飾の洗練された美しさは、建物と家具の調和の取れたフォルムの美を感じさせるものでした。
奥付によりますと、本書は『週刊朝日百科 日本の歴史(92号〜120号 2004年3月〜9月)』に連載された「西洋家具ものがたり」に、アインシュタインが泊った部屋の1項と概説を付け加えて書籍にしたものです。