Bel Canto
価格: ¥2,241
たしかにルネ・フレミングのソプラノは、いま世上もっとも美しい声のひとつであることは間違いない。現代音楽に強い関心を示すだけでなく、モーツァルト、シュトラウス、ヴェルディを歌っても名高いフレミングだが、彼女は自分のキャリアの中心にはいつも“ベル・カント”のレパートリーがあったと語っている。ベッリーニ、ドニゼッティ、そしてロッシーニのオペラからのシーンとアリアを呼び物にしたこのレコーディングでフレミングは、ベル・カントの特徴を示すとても難しい声楽曲を、努力のあとも見せずに技術的に完全にマスターしたことを証明している。どの音も正しい位置におさまっている。彼女の音の連なりは、両方向に限りなく広がる音階を含めて、ひと続きの美しい真珠のようにきれいで、ペースも安定している。彼女の跳躍進行はつねに的確な音の高さに舞い戻り、イントネーションは完璧である。
フレミングはまたドラマやペーソス、音楽の抒情性に対する共感を示し、伝説的なヒロインになりきる能力を発揮している。よく知られた作品やあまりなじみのない作品から選ばれた曲目は、のどかな牧歌から陰険に脅迫するようなものまで、どれも美しく人を楽しませる。しかしながら聴き手のなかには、とくにゆっくりしたアリアにおいて、声の調子を変えすぎる、フレージングが過剰である、音を長く延ばす、長い音を強調するといったフレミングの傾向が、楽曲のもつ平明さや彼女の表現力豊かなコミュニケーションの率直さを損なっていると感じる人もいよう。歌いぶりは“ベル・カント”スタイルの最新の研究成果にもとづいていて、装飾を(リフレインにおいてのみ)歴史的に正しいとみなし、原典に忠実か、想像力を自由に働かせるか、そのバランスの問題に考慮を払っている。聖ルカ管弦楽団のサポートは見事で、独奏部が傑出しており、とくに管楽器群はすばらしい。(Edith Eisler, Amazon.com)