インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

右と左―政治的区別の理由と意味

価格: ¥2,100
カテゴリ: 単行本
ブランド: 御茶の水書房
Amazon.co.jpで確認
老学者と老訳者の渾身の作 ★★★★★
私が,文字通り政治思想の右も左も分からなかった頃,ソ連が崩壊し自民党が一時政権を下りた.「オール総与党化」「左翼はもはや過去の遺物」などと叫ばれ,左翼がもげた以上もはや右・左の区別は意味を為さない,といったような言説が跋扈し,F・フクヤマが西側世界=アメリカの勝利を『歴史の終わり』で高らかに宣言していた.

ソ連崩壊後もう十年が過ぎる.しかし政治思想の右・左の区別は本当に意味を失ったのだろうか? この疑問に応えたのが本書である.本書で著者は,左右の区別は分析的概念として,今尚意味を持つと主張する.「白夜」の時間帯が幾ら長時間でも「朝」「夜」という概念が失われないのと同様,左右の区別には意味があるというのである.中身を良く見れば「右寄り」「左寄り」に分類可能だし,「超党派」や「無所属」の議員にもだいたい右派と左派に分類できる.そして,著者は,右と左を区別するメルクマールとして「平等」が基軸になると言う.即ち「平等」により注意を払うのが左派で,あまり注意を払わないのが右派だというのだ(右派が「平等」に全く注意を払わないという意味ではない).

著者の主張の妥当性は読者が個々に判断して欲しい.著者は政治思想・法哲学の老大家で大変博識な人物である.実際,含蓄のある文章で,私自身何度か「うーん」と唸らされた.頁数は少ないが記述は高度に凝縮されており,価値は十分にあると思う.一つ注文をつけると,イタリアの政治事情は日本人にあまり馴染がない.その意味で訳注をつけるなどして欲しかった.訳者の健康上の事情でそれは難しかったのかもしれないが.