GIFT
★★★★☆
『ゲド戦記』の映画化で一般の人たちにも知名度の上がったル=グイン先生の、ファンタジー新3部作「西の果ての物語」第1弾。読み始めた最初の印象が「く、暗い。まあ、ル=グイン先生だから仕方ないか」。
ファンタジーの中で『ゲド』が特異な地位を占めているのは、独自の世界観を構築していて、とりわけ魔法使いたちが魔法を渋々としか使わず、使っても爽快感がまるで無いところにあります。「ハリーポッター」やハリウッド系のファンタジーの対極ですね。
今回も魔法使いの才能(ギフト)を引き継ぐ色んな部族が出てきますが、部族ごとに一種類の才能しか伝わっておらず、世代を重ねるごとに衰退気味です。そのどれもが、人を幸せにするとは言いがたい不気味な魔法なのですが、それらがあることで部族は互いに牽制し、なんとか秩序を保って生活しているという具合です。
こういう鬱屈した設定なのに、何故か読ませるのがさすがにル=グイン。強すぎるギフトの持ち主として父親によって目を封印させられた主人公の少年と、幼馴染みの少女の気持ちの揺れを巧みに描いて、ル=グイン・ワールドにグイグイと引き込んでいきます。
物語は続編の「Voice」で加速度的に面白くなりますので、ぜひ読み次いでいってください。