松本清張の全貌を知る手がかりの書
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冒頭にあるように、本作は作者が〈松本清張小説セレクション〉全36卷の編集にあたって、その巻末にエッセー風の解説をつけたものを纏めたものです。従って、ここで語られている内容は、松本清張のほぼ全作品に及んでいます。
更に、36のエッセーがすべて違った切り口で書かれており、その内容は単に松本清張本人に限定されることなく、推理小説を書くこと、もっと言えば小説を書くことの本質まで迫っており、非常に興味深い作品になっています。その結果、松本清張の全貌を知る手がかりの書であると同時に、推理小説の解説書でもある訳です。
面白かったのは、かつて松本清張の担当だった姉妹と作者との対談で、ここには松本清張の知られざる「個人」が見えてきます。
女性の表現についてや、ユーモアの表現のない作品ばかりであることなど、言われてみれば、と言うことが沢山あって楽しく読むことが出来ました。