現代を生き続ける私ーー自分の力で自分を再構築する。
★★★★☆
衝撃的なプロローグで始まるこの小説には、現代アメリカを誠実に生きようとする青年の生命力が溢れている。身を削る労働に耐えて代々富を築いてきた一家の四代目、デイヴィッドは魅力的な造型だ。
先代の足跡を批判的にたどることで自分の姿を知ろうとする一方、行動的で力強い妹をはじめとする周囲の人間群像から様々な形の愛や刺激を受けて行く。しかしデイヴィッドの現実の社会での姿は現代の価値観と奇妙にずれて、現実感を失っていかざるを得ない。
広大ながスペリオル湖周辺の自然を背景に、現代アメリカの家族、人種、セックス、宗教の問題をデイヴィッドの物語を通して描いていく力作だ。続編も出ているようだ。