「大淀」―最後の聯合艦隊旗艦
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今日の話題社、1990年刊行『航跡の果てに―新鋭巡洋艦大淀の生涯』の改題版である。
群馬県生まれの筆者は昭和17年、15歳で特年兵一期として海軍に志願入隊する。現代で言えばまだ中学生だ。そんな愛も恋も海すら知らない山里育ちの少年が乗り組みを命ぜられたのは、新鋭軽巡洋艦「大淀」―最後の聯合艦隊旗艦となったフネであった……。
水兵にとって、仲間は兄弟であり、艦長は父である。入隊直前に母が病死し、乗り組みだったのはこの艦だけだったと言う筆者にとって「大淀」は、まさしく第ニの母であり永遠の初恋の人であった。
大戦末期の激戦を、ほぼ無傷で駆け抜けた「大淀」。彼女は終戦間近の呉大空襲にて、その栄光の生涯を閉じる。戦後、完全浮揚の後に、生まれ出でた呉工廠にて解体された。
先の大戦終結より60年余、戦没地の江田島・飛渡瀬地区の地元民によって建立された慰霊碑には、今なお献花の絶えることはない。