政体の経済学!
★★★★★
「オッカムの刃」の通りに階級ごとのインセンティブに焦点を当て、DPや契約理論をシンプルな形で使い民主主義政体がどう生じてどう維持されるかの思考枠組みを提供してくれる。社会における違った階級は、政治権力と資源を分配するために異なった政体を求める。上流階級にとっては虐げすぎてはダメ、下級層にとっては下克上してもダメ。民主化がうまくいくにはエリートが権力を投げ出してもイイって思ったときなんだけど、それには市民社会が強いこと、政体の構造、政治経済的危機の種類、経済の不平等度、経済の構造、グローバリゼーションの程度が関係してくることが述べられる。どの議論も実証可能なもので、実にわかりやすい!
中流階級の役割、クーデターについての考察もある。紹介する事例(南米)も豊富。数式がやや煩雑な気もするが、同じようなロジックが何度も出てくるので特に読みにくくはないだろう。モデルに沿っている実例も豊富で、今後の研究の展開予想も載っているお得な本。
独習本としても使えます。
★★★★☆
いわゆる、政治過程を取り込んだエコノミクス・モデルのテキストです。
とはいえ、Acemoglu & Robinson の動機は、革命(ないしは暴動)のような市民活動と政治体制について、整合的な理論モデルを開発するという点に尽きるのではないかと思われます。ですから、標準的なPolitical Economics を学習したい人は、Persson & Tabellini (2000) や Morro (1994) を参照する必要があるかもしれません。モデルについては、4章から展開され、公共選択理論の基本的なツール(中位投票者定理や確率的投票定理など)に加えて、グロスマン・ヘルプマンタイプの政治献金モデルについての解説もなされており、独習本としても使用できると思われます。また、ハードカバーで4000円台なのも魅力です。