この本のよい点は、理論を包括的に取り上げているだけではなく、
実験データや、具体的な事例をふんだんに盛り込んでいるため、
その研究での考えるプロセスを味わうことができるということ
だと思います。
ただ、このサイズの概説書であるが故に、記述が不十分な点も
あります。その点を、各章suggestions for additional reading
で、10冊弱の本を紹介することで、補っているのでしょう。
SLAの全体像を、新しい理論による示唆ももらさず概観したいという
人にお勧めの本だと思います。
また、SLAはまったくの初心者だという人は、Rod Ellis.1997.の
『Second Language Acquisition』が読みやすくて特にお勧めだ
と思います。
その他、この本が工夫していた点は、各章の終わりにSuggestion for Additional Readingとして、参考文献を多く紹介していたり、Points for Discussionとして、討論をするための話題を提供してくれていたところです。概説書であるだけに、深く踏み込んで詳細を語る本ではないのですが、現在SLAがどんなことを取り組んでいるのか、全体像を知るにはお勧めの本だと思います。
最後に目次を示しておきます。(番号は章の番号です。) 1.Introduction 2.Looing at Interlanguage Data 3.The Role of the Native Language: A Historical Overview 4.Child Language Acquisition: First and Second 5.Recent Perspectives on the Role of Previously Known Languages 6.SLA and Linguistics 7.Universal Grammar 8.Looking at Interlanguage Processes(Psychology) 9.Interlanguage in Context(Sociology) 10.Input, Interaction, and Output 11.Instructed Second Language Learning(Forcus on form,etc) 12.Nonlanguage Influences 13.The Lexicon 14.An Integrated View of Second Language Acquisition