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Breath, Eyes, Memory: A Novel (Vintage Contemporaries)

価格: ¥1,096
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: Vintage
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   カリブ海に浮かぶ大きな島イスパニョーラ島を、ドミニカ共和国と二分する国ハイチ。「息吹とまなざしと記憶がひとつになる土地」ハイチに生まれた母と娘の物語だ。

   主人公ソフィーは12歳のとき、顔さえ覚えていない母といっしょに暮らすために、生まれ故郷の貧しい村からニューヨークへ出て、思いがけない事態に直面する。恋人ができたとき、母から処女膜検査を受けることになったのだ。そんなことに耐えられないと家を飛び出すソフィーだったが、母が故郷ハイチを出る前に受けた無惨な体験を、少しずつ娘も理解するようになる。

   ニューヨークへ渡っても、母の無意識のなかに蓄えられた、いまわしい記憶は消えることがない。そんな母への愛憎相半ばする感情に戸惑いながら、生まれたばかりの娘を抱いてハイチへ帰郷したソフィーを待っていたのは…。ストーリーは悲しい結末を迎えるけれど、一気に読み終えたあとに不思議な解放感が残る。

   ハイチはヨーロッパの植民地として過酷な体験をもち、早々と革命による独立は果たしたものの、いまも不安定な政治や経済状況に苦しむ国で、著者はそれを「悪夢が家宝のように何代にもわたって受け継がれる国」と呼ぶ。

   ダンティカは1969年生まれの、才能あふれる若い作家。文字をもたない女たちが、ハイチの民衆言語クレオール語で夜ごと語り継いできた物語を聞きながら育った。幼いときに耳にした「物語る声」が体中にぎっしり詰まっている。その声の世界に文字を与え、多くの読者に開いてみせることのできる作家だ。暮らしのなかの辛苦、女や力なき者にふるわれる暴力といった、旧植民地社会にいまも残る悪夢を解毒する「語り」の力を、とことん知っている作家でもある。

   2作目の短編集『Krick? Krack!』(邦題『クリック?クラック!』)で全米図書賞の最終候補にもノミネートされた大型新人。98年9月には『The Farming of Bones』も出版。2001年1月には初来日を果たした。邦題は『息吹、まなざし、記憶』。(森 望)

死して初めて自由になれるのか? ★★★★★
ハイチ人のある女性の物語であるが、この中に常に存在するのは女性の処女性である。母となる女性は常に娘の処女性に責任を負わなければならない。そのために、娘が母から「される事」、それは娘には耐えられない屈辱であるのだ。これははハイチの伝統文化の一つであるが、それは負の文化でもある。主人公は一生、そのために受けたトラウマと戦わなければならないのだ。そして娘を産み、母親となった主人公は自分の娘には決してその苦しみを負わすことがないだろう、ということがせめてもの救いか?ハイチの自然、ハイチの民衆の暮らし、ハイチの言葉であるクレオール語(フランス語とアフリカ系住民の言葉を混合した言語)、そしてハイチの民話。この小説に、読者はハイチを強く、身近に感じるのである。
A Moving story ★★★★★
Breath, Eyes, Memory is one of the books written about the Caribbean that I really enjoyed. Like Edwidge Danticat's other novels and stories this story is well written in a lyrical evocative style. What I cherish about the story is the fact that I came to have a better understanding of Haiti, their culture which is close to that of Benin in Africa and their rich though mysterious belief. Much of the pains, fears, horrors and complications of Haitian history are unveiled in this amazing story which can make you cry, sigh, laugh, angry and happy in different turns. This true to life story is a recommended read.

Also recommended: DISCIPLES OF FORTUNE, THE USURPER AND OTHER STORIES, CRY THE BELOVED COUNTRY

A Moving story ★★★★★
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女たちが繋がりゆく生命の木 ★★★★★
本書は気鋭のハイチ系女性作家のデビュー作。マスター取得のために書いた本作が高い評価を受け、彼女は一躍注目される若手作家の仲間入りを果たした。(エドウィージ・ダンティカというカタカナ表記もあるのでご注意を。)

本書は、主人公ソフィー・カコが12歳の少女から思春期を経て母となるまでの成長譚で、全4部構成。登場人物らがハイチ-米国を往還するロード・ノヴェルと見ることも可能だ。

ハイチの<山>と首都ポルトープランスの喧騒、ヴードゥーに根ざしたハイチの精神世界と先進国米国の差別的文明社会、男と女の関係性などを通奏低音に、連綿と語り継がれ繋がりゆく女たちの「生」が描かれる。

また、眼に見える暴力(トントン・マクート、「検査」)、見えない暴力(「臭いハイチ人」)両方の生みだすさまざまなかたちの悲劇も、見逃せない主題になっている。

ハイチをめぐる非常に重い題材を扱っているので、読み進むうえで一度や二度の中断はやむをえないかもしれない。クレオール語独特の固有名や言いまわしも頻出する。しかし「語り部の系譜」に繋がるダンティカは、自然のつくりだす色彩と、ユーモアあふれる会話や歌のリズムを織りこみ、上質のタペストリーをつくりあげてしまった。

本書に感銘を受けた向きは、原作にあたって英語に散りばめられたクレオール語を味わうのも一興。

手垢のついた表現かもしれないが、あえて言いたい。本書はまさに珠玉の1冊だと。

カリブの魔法 ★★★★★
ダンティカには、読み終えるまで本を閉じさせない不思議な魔力がある。本書には、悲痛な出来事が描かれているのに、どんどんページをめくらせる。一言で言ってしまえば「面白い」のだけれど、読後は胸が痛い。現実の今の生活の中にハイチの昔語りが加わって、独特の雰囲気をかもし出すダンティカの世界は、やはり魔法がかかっているような不思議な魅力に溢れている。