国際関係論におけるconstructivismと比較政治学におけるsocial movementの理論に影響を受けた理論的枠組みを基に、著者らの言うtransnational advocacy networkが、国際的な規範の問題にどのように関わっているかを、情報等の観点から分類されたネットワークの行う四つの政治形態を目安にしながら述べています。
最初の章で上のような理論的な枠組みを提示し、次の章で過去の史実に照らした具体例を分析、続く三章で現代的な人権、環境、女性の問題を扱い、結論へと至るという構成をとっていますが、実証分析には各章複数の具体例を用いているので、この比較的薄い一冊でも事例は非常に豊富です。また、その中で、規範に関する当事者らの認識の変化に重点を置き、ネットワークを媒介点とする形で国内政治と国際政治とが繋がっている様子を描くことで、国際関係の動態に関する理論的な視点も提供しようとしています。そのほか、epistemic communityとの違いに触れている箇所などもあります。
テーマ的に関心がある人にも、国際関係の理論に関心がある人にも読む価値のある好著ではないかと感じました。