難そうに思われましたが、読んでいくと、物語風で違和感なく読めます。
ただ、最後のほうは、未完なだけあって、理想の科学技術などを語っていくのですが、
発想は面白いのですが、ただツラツラと書き連ねた印象。もったいない…。
ちゃんと完成したのを読んだら、そうとう面白かっただろうに…。
排熱利用したエネルギー政策や、バイオテクノロジー、遺伝子技術など、
今でも、まだ完成していない技術を予言しているのは驚嘆するばかりです!
本書の半分は、W.ローリーによるベーコンの伝記的記述、訳注・解説などにもページが割かれており、実質の内容は60ページ足らずといったところ。
それでは、この書において注目すべき部分は何処なのでしょう? 訳者解説では、ベーコンの想像力、文学観、そして学問研究を実現するための見取り図を描いた部分に光が当てられています。そこからもうかがわれるように、本書において求められる読みは、ベーコンによって完成された寓話を愉しむようなものではないのかもしれません。むしろ要求されるのは、文章の彼方から透けて見えるベーコンを、我々の包括的な理解でもって捕捉せねばならないような読み、これではないのでしょうか。
私見をつらつらと述べてしまいましたが。評者にとって、読み手を挑発しているかのようなこのテクストが酷く魅力的に思われたのでした。