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Olive Kitteridge: Fiction

価格: ¥1,388
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: Random House Trade Paperbacks
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人生にわずかな希望や愛を求める普通の人々の悲喜劇 ★★★★★
米国北東部メイン州の沿岸の小さな町Crosbyを舞台に、数学教師Olive Kitteridgeを軸に繋がる13の短編集。
大柄のOliveは、町の住民たちから気性が激しく、寛容がなく、頑固で批判的だと思われている。町の小さな薬局を経営する薬剤師の夫Henryは温厚な人物として誰からも親しまれているが、夫の善人ぶりはかえってOliveを苛立たせるだけだ。最初の短編「Pharmacy」では、中年にさしかかったOliveとHenryが別の異性に惹かれる微妙な心理を描いており、読者はHenryに同情心を覚えずにはいられないだろう。だが、OliveとHenry以外のCrosbyの住人を主人公とする短編で脇役として登場するOliveからは異なる人物像が浮かんでくる。現実世界では人とはそういう複雑なものである。読み進むうちに彼女の毅然とした批判精神に対して反感と同時に尊敬も抱くようになり、老齢に達した孤独なOliveのほのかな恋を描いた最後の短編「River」では、(たぶんOliveのひとり息子が感じているように)彼女の欠陥をすべて受け入れたうえで幸運を祈らずにはいられないだろう。
鬱、自殺、親子関係、不倫関係、老化といったテーマを扱った短編はそれぞれが独立したストーリーで、Stroutの卓越した語りに吹き出したり涙ぐんだりしながら、いつのまにか、これまで会った人々を思い出し、自らの人生を振り返っていた。熟練した文芸作品でありながら気取ったところがなく、深い人間理解に基づく優れた短編集である。
凝縮された感情 ★★★★☆
 アメリカ東部メイン州の海に面した小さな町を舞台に、元中学教師の老婦人とその夫、教え子、知人など町の住民が交代で主役をつとめる連作短編集。どの人物の言葉や行動にも深く凝縮された感情が流れ、ときに織りまぜられる海の景色でさえ心象風景となっている。切りつめた会話、静かに抑制された描写が続き、やがて心の叫びが聞こえてくる。男と女が出会って別れ、夫と妻が衝突し、親と子がいがみ合い、長年連れ添った伴侶が病に倒れて死んでいく。どれもよくある話だが、心のひだを細かく織りなしていくような筆致に説得力があり、人生の悲哀と苦悩、ストイックな感情、ほとばしる激情がありありと伝わってくる。とりわけ主人公の老婦人の性格設定が秀逸で、婦人の心の中には深い愛情と強烈なエゴが渦巻いている。気性が激しく、おのれの主張を枉げず、周囲に恐れられる存在でありながら、過敏とも言えるほど繊細な感情の持ち主で傷つきやすい。同じひとりの人間の矛盾した要素を描いている点で、Elizabeth Strout はまさしく第一級の作家である。そんな婦人が孤独と沈黙の世界の中で胸のときめきを覚える最後の物語は、海の底のように深い思いをたたえた第1話と並んで本書の両端を支えるにふさわしい絶品。英語は難解というほどではないが、語彙レヴェルはやや高い。