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超低金利時代の終わり

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カテゴリ: Kindle版
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 日本では14年近くの間、短期金利はゼロ近くで推移し、長期金利は2%以下で推移するという極めて珍しい時代を送ってきた。過去の歴史を振り返ると、長期金利が1%近辺で推移したケースはないわけではない。17世紀のイタリアのジェノバや第二次世界大戦後の米国でやはり同様の超低金利時代があった。しかし、いずれもその後に金利は大きく上昇している。
 あまりに長期にわたり、低金利に慣らされてしまった我々日本人にとり、金利は低くて当たり前の感覚に陥ってはいまいか。もしここで金利が上がったら、いったい何が起きるのかを考えたことがあるであろうか。
 3・11を経験した日本人にとり、起きるはずはないという前提で物事を考えることは危険であることは身に染みて感じてきたはずである。もし、起きたらどうする、ということを前提で考えることは、金利に関しても同様のはずである。
 もしかすると世界の歴史の中で、2012年という年は「超低金利時代のピークの年」と呼ばれることになるかもしれない。そんな兆しも出ている。むろん、これで絶対に金利が上昇するとする予言するものではない。
 しかし、スイスで長期金利の過去最低水準を更新し、ドイツの2年債利回りがマイナスになり、英国や米国の長期金利も過去最低水準に低下したことを見ると、むしろ金利が底打ちした可能性もある。
 この本では、まず歴史上希な超低金利が世界各地で発生した理由について説明し、次に世界的な超低金利時代の兆しについて確認したい。さらに超低金利時代に慣らされてしまった日本の姿について見た上で、超低金利時代が終わって何が起きるのかを予想してみた。
 もし日本の金利が上昇をはじめたら何が起きるのかという想定は、地震の想定のように不可欠のはずである。オオカミが来るぞと言いふらして恐怖心を煽るのではなく、オオカミが来たらどうするか、それを冷静に考えることができるうちに、そのリスク等を想定しておくこともたいへん重要ではなかろうか。
 リスクといえば金利の急上昇を促しかねないリスクが存在する。特に巨額な政府債務を抱えた日本では、金利の上昇は緩やかなものにとどめなければならない。しかし、デフレ脱却を目的として、日銀による国債引受まで提唱されてきている。これにはたいへん大きなリスクが潜み、長期金利の急上昇を招きかねない。これについても考察したい。
 今後の金利の上昇についても、過去のケースがあまり参考にならないことも認識しておく必要がある。少なくともここ15年間の動きはほとんど参考にならないであろう。ところがこの間に、日本の経済財政構造は大きく変わってしまっている。同じ金利の上昇でも、15年前と現在ではまったく影響が異なっている。この間にIT革命があり、コンピュータや通信技術が発達し、情報伝達速度が飛躍的に向上している。また、金融そのものもグローバルに結びつき、海外市場との相互の影響力が格段に大きくなっている。このようなことも前提にして日本における金利の上昇を考える必要があろう。