改正臓器移植法―その意義と問題、そして私たちの決断
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本書は、小松美彦さん(東京海洋大、科学史)、
市野川容考さん(東大、医療社会学)
田中智彦さん(東京医科歯科大、政治哲学)らが編者となり、
現行の臓器移植法とその問題点を論じる著作です。
1 脳死を一律に人の死と定め、
2 家族の承諾による臓器提供と
3 ゼロ歳児までの臓器提供を認める新しい臓器移植法(いわゆるA案)
編者らは、その内容と改正に至るまでの経緯を紹介するとともに、
人文・社会科学、医学などの立場からどのような点が問題かを論じます
長期脳死者や脳死から回復した事例
児童虐待が絡む深い闇
多数派による先制への懸念など
どれも本当に痛切で心に残ったのですが、
とりわけ印象的だったのは、臓器を提供した遺族による手記です。
法、倫理、宗教、科学―それらの境界に位置し
理論的にも、感情的にも激しい対立があるこの問題を
多角的かつ平易に論じた本書。
新しい臓器移植法のもと、
臓器提供について個人が明確な意思決定を迫られるなか、
一つの参考にしていただきたい著作です。