治療を受けるよう雇い主に迫られたバロウズはミネソタに出かけ、断酒プログラムとカウンセリングを受け、ぬいぐるみを使ったグループセラピーについておもしろおかしい逸話を聞く。1ヵ月ほどこうした治療を受けた後、彼はかろうじてしらふの状態でマンハッタンに戻ることになる。そして、リハビリ施設で酒を断つことと、酒を中心にまわっていた元の生活を再開しつつアルコール類を避けることは別だということを思い知る。その後、クラック中毒者と無分別な恋に落ちた彼にとって、しらふでいるとことは格段に難しくなり物語は一段と悲惨さを増す。
たしかに「もとアルコール中毒者が酒を断つために苦闘する」話は自叙伝としてはめずらしくない。しかしバロウズの記述は月並みなアル中克服物語の域を超えている。それは伝統的な「誘惑への抵抗」というプロットにこだわっていないうえ、感じの悪い軽蔑すべき行動をとっているときでさえ、バロウズの分身である主人公に共感を持てるからだ。しかしバローズの自叙伝がこれほどすばらしい読み物になっているのは、なんといっても才気あふれる大胆なユーモア感覚のおかげだ。だからこそ思い出したくもないような出来事に関しても、著者は感傷的にならず、常に「ドライ」な姿勢を保ち続けることが可能なのだ。(John Moe, Amazon.com)