インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

パンドラの匣 (新潮文庫)

価格: ¥546
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
Amazon.co.jpで確認
素晴らしい。 ★★★★☆
「正義と微笑」は役者を志望する少年(ちなみにハットトリックを決めるほどのサッカー手練)の日記という体の小説、
「パンドラの匣」は"健康道場"と称する結核の療養所で生活する青年と、共同生活を送る男女らを描いた書簡体小説である。

どちらの物語も明るく爽やかな物語である。とは言えノンキで白痴的な明るさとは異なり、
様々な紆余曲折を乗り越えた上での明るさである。その紆余曲折がゴチャゴチャしていて面白いのであるが。

「パンドラの匣」で療養所に勤める女性:マア坊がとても可愛らしかった。
主人公のルームメイトの男らが自由思想を語り合う場面も良かった。
綺麗なダザイは好きですか? ★★★★★
 斜陽や人間失格など晩年の作品が脚光を浴びたせいで「太宰=暗い」というイメージが形成されてしまったのは仕方ないと言えば仕方ないのですが、じつは彼は非常に多彩なテーマと文章形式で作品を書き分けられる屈指の技巧派作家でありました(そのぶん自分だけのスタイルというものが安定していなかったとも言えます)。


 で、そんな彼のいくつもの側面のひとつ、「明るい太宰」の代表的な作品がこちら「正義と微笑」と「パンドラの匣」。女生徒や津軽も良いですが、私は俄然この2作品が好きです。書簡体の小説はえてしてクセがあるものですが、これらに限っては普通の物語と同じように気持ちよく読める。やぱり太宰は天才だなと思わされます。


 夢を追う少年の揺れ動く情緒と葛藤、潔癖な幻想や蒼い苦悩を描きだす極上の青春小説「正義と微笑」。誤解を恐れずに言えば、太宰文学最高にポップでハートフルな清純ラブコメ「パンドラの匣」。どちらも遜色なく素晴らしい。ヴィヨンの妻、斜陽、人間失格あたりで太宰を知ったあなたに是非とも手にとってほしい、青春と希望の太宰文学。もちろん、鋭敏な感性を抱える思春期の少年少女にもお勧め。
若者の心を見事に捉えた作品 ★★★★★
太宰治にこんな「青春小説」があったのは意外でしたが、それ以上にその素晴らしさに圧倒されました。

その中でも個人的には、「正義と微笑」が気に入りました。
自分の行く先を決めかねて懊悩しながらも、役者としての道を見つけ突き進む若者の姿に感動さえしました。
主人公は盛んに自分のことを卑下していますが、とんでもない、現代の若者たちよりもずっとしっかりしていると思います。
常に考えているからこそ、その先の「光」が見えてくるのだと思います。
是非とも、今の若い人たちに読んで欲しい作品です。

表題作の「パンドラの匣」は、「正義と微笑」が日記形式で書かれた小説であるのに対し、こちらは書簡形式の小説になっています。
この書簡形式であるが故に、文章は主人公の主観によるものになりますが、作者はそれを上手く利用しています。
二人の看護師の間で揺れる主人公の本心が、ラストになってようやく明かされます。
主人公の二人への想いがどんなものかを、見事に隠し通しています。
と同時に、思春期の青年の異性への思いや態度が、実に見事に描かれており、納得の一編です。

二編とも見事に若者の心を捉えており、しかも書かれた時代を考えると、信じられない思いです。
太宰にこんな作品があったのを今まで知らなかったのが、非常に残念です。
黒田先生の言葉から見る先生と弟子(イエスとその弟子と) ★★★★★
 遠藤周作さんは『イエスの生涯』のなかで、自分を十字架につけた人たちは、愛し方を知らなかった、彼らをお許しください、と神に訴えるイエスを描いている。また、奇跡が行えず、「無力」で役に立たない、それゆえに「愛」にあふれたイエスを描いている。これらのことと、この本に収められている「正義と微笑」に出てくる黒田先生の発言とは通じているように私には思われる。黒田先生は、教え子の元を離れるにあたって、こんなことを言う。
 生活に直接役に立たない勉強こそ、その人の人格を作る。勉強なんてものは、覚えてすぐ忘れてしまってもいいものなんだ。大事なのは、カルチベートされる、ということなんだ。カルチベートされる、というのはつまり、愛する、ということを知ることだ。まことにカルチベートされた人間になれ!
 好き嫌いをせずに勉強すること。それは、キリストの教えの一つ、敵を愛せ、にも通じているような気がする。「愛」は直接役には立たず、それゆえに尊い。遠藤周作さんが太宰の作品に触発されたのか、あるいは、偶然にも両者は「愛」の観念を同じくしたのだろうか。
 黒田先生と教え子との別れにせよ、「佳日」の「恩師」とその教え子とにせよ、「風の便り」での手紙のやり取りにせよ、藤野先生と「周さん」との別れにせよ(「惜別」)、……太宰の意識の下には、いつもイエスとその弟子とが沈んでいたのではあるまいか。
 また、とんちんかんなことを書いてしまいました。失礼しました。
 
 
お気に入りのひとつです ★★★★★
主人公の20歳の青年は自称「新しい男」である。
その青年から、ある詩人の親友に宛てた手紙の内容ということで物語は進む。
結核治療のサナトリウムならず、「道場」において、新しい男に生まれ変わった主人公が
様々な人と出会い、心揺れ動いて成長する様をユーモラスに描いてある。
もっと彼の今後を見てみたいものだが、手紙は唐突に終わる。
しかし、その先は明るい日を目指す蔓にたとえて締めくくられている。

周りがいうところの「トンチンカン」な主人公はまぁ今で言うところの「天然」といったところでしょうか。
(その反面、本人は、新しくなったと言ってはいるが、まだ多少ニヒリスト気取りの部分もある)
その天然のもつ明るさが、人間模様に深く影響していくのがとてもコミカルで楽しい。

太宰の作品であるということを忘れ、ゆったりと読んでしまう。
でも、これも太宰であるとやっぱり思ってしまう、そんな作品じゃないでしょうか。