Louis I. Kahn
価格: ¥5,444
1901年にエストニアで生まれたルイス・イシドア・カーンは、のちに戦後の米国で最重要視される建築家として、ミース・ファン・デル・ローエ、ヴァルター・グロウピス、ル・コルビュジエといった現代の名建築家と並び称されることになる。独創的な現代作品で名声を得たカーンだが、やがてモダンムーブメントのさまざまな規範に疑問を抱くようになる。なかでも疑問視したのは、20世紀後半に求められる社会的スペースを提供するうえでの、国際様式と呼ばれるモダニズム建築の可能性だった。
1947年、カーンはイェール大学教授に就任した。彼はその建築家としてのキャリアを通じて教鞭をとり続け、若い世代の建築家に影響を与え続けることになる。また、大学で教えることにより、カーン自身の概念がさらに発展し、設計をめぐる彼の進化し続ける定義が広く浸透することになった。建築における記念碑様式の研究に心ひかれたカーンは、重厚でがっしりとした素材や形から建造物を生み出し、鮮やかな光の作用を建築に採り入れた。この手法は、当時の同業者たちがつくっていた、軽量ガラスやスチールでできた建物とは正反対のものだ。この記念碑様式には、儀式としての人間の経験に対する彼の関心も染み込んでいる。カーンのキャリアは、わずか20年あまりという短さにもかかわらず、豊かで多様なものだった。光や大きさ、構造、記念碑性、幾何学的形態、そして材質といった問題を、カーンは繰り返し自らに問い直してきたのだ。
本書はおもに年代順に彼の作品をたどりながら、主要なテーマを見いだし、そのテーマに沿ってキーワードを検証している。各建造物は、カーン作品の精神を伝えるダイナミックな写真で紹介されている。また、コンセプトの発展過程を示す作品例では、完成型へと至るまでのインスピレーションや初期プランを見てとることができる。巻末付録では、カーン自身による文章の抜粋が収録されている。さらに、カーンがその生涯で手がけたプロジェクトの完全リストも収録。ペンシルベニア大学アーカイブのルイス・I・カーン・コレクションを基に作られたこのリストには、231を超えるプロジェクトがリストアップされているが、そのうち少なくとも30は、これまで設計者が特定されていなかったプロジェクトだ。