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ベーシック・インカム入門 (光文社新書)

価格: ¥882
カテゴリ: 新書
ブランド: 光文社
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ベーシック・インカムについては理解できるが、これだけでは是非は判断できない ★★★★☆
まずは、ベーシック・インカムについて「聞いたことある」レベルだった自分に反省。そういう意味ではこのベーシック・インカム入門は非常に勉強になったし、私自身にとってとても斬新な方法だと感じた。

また、本書内で記されている、「日本の現実」で、公的扶助というセーフティーネットが穴だらけで、捕捉率(助けられるべき人が助けられている率)が 20%という低さには驚いた。諸外国に比べて低い。

日本には○○手当というものはいくつあるだろうか、全部を知っている人はどれくらいいるのだろうか。複雑なシステムが捕捉率を低くしているのではないだろうか。

そういう意味からいっても、ベーシック・インカムで、全国民に一定のお金、しかも最低限の金銭ではなく、普通レベルの生活ができる金銭を渡す。あとは、自己責任としたほうがシンプルでわかりやすいと思う。

もちろん今の日本では「財源は?」という話になるし、与党が「ベーシック・インカム」なんて言おうものならば、野党は「選挙対策のばら撒きだ」なんて話になって、進まないのは目に見えているが、ネット上でもベーシック・インカムについて結構議論されているみたいなので、これを機に国会でやること無い国会議員さんなんか、ベーシック・インカム導入論を唱えてみてはどうでしょうか。
ベーシック インカム根拠 あるんだな ★★★★★
1.内容
今の日本では、生活保護に代表される公的扶助がほとんど機能していない(捕捉率約20%)。だが、仮に機能していても、能力がないなどのレッテルを貼られてしまう。また、完全雇用はめったに実現するものでもないといったことなどもあり、「保険・保護モデル」(p29)は、破綻しているといえよう。そこで、貧困をなくすためなどにも、新たなモデルが必要である。それが、本書で言及されるベーシック・インカムである(とりあえずの定義はp22)。ところで、「働かざるもの食うべからず」とはよく言ったものだが、その観点からすると、ベーシック・インカムは、働かなくても金銭がもらえるので、皆様も違和感があろう。しかしこのベーシック・インカム、以前から、各国で主張されたものである。以前からの各国の主張も豊富に示してある。また、ベーシック・インカムに対する違和感などは、「ベーシック・インカムに関するQ&A」(p273)や、本文で答えたつもりである。
2.評価
たとえ、歴史的背景などが豊富で、レビュアーを含めた読者の違和感の大部分を解消するのに十分な内容になっている。一例を挙げると、堀江貴文さん(ライブドア元社長)や、小飼弾さん(アルファブロガー、投資家)がベーシック・インカムの導入を主張しているので(実際は知らないが、ご両人ともお金持ちのイメージがある)、申し訳ないが胡散臭いと思っていた。しかし、費用や、現在でも控除がありお金のある人が優遇されている側面があることからすると、お金のある人にも給付するのには、それなりの根拠があるようだ。ただ疑問もある。それは、インフレになる可能性が高いはずで、十分な給付ということがあるのか、ということである。若干疑問はあるが、ベーシック・インカム導入にはそれなりの根拠・メリットがあることがよくわかり、入門書としては出来がいいと思うので、星5つ。
ベーシックインカム思想の概観の分かる良書 ★★★★★
自分は経済学研究科の院生ですが、負の所得税についての論文を書くにあたって、大いに参考にさせてもらいました。

本書の主な内容は、ベーシックインカム(基本所得)の考え方の説明と、それやそれに類似する考えを提唱した様々な思想、立場の人々についての説明でしょう。実際、保守から革新、労働者から経済学者、哲学者、運動家から政府の役人まで、女性や男性、ヨーロッパやアメリカ、古くは1700年後半から現代まで、実に様々な人々が、様々な視点からベーシックインカムを提案して来たし、議論して来ました。

筆者は、そういった様々な視点を余す事無く紹介し、できるだけまとめようとも努力し、幾つかの大きな論点からベーシックインカムの論拠を捉えようとしています。しかし、上述の通り、もともと様々な人々の意見や思想を紹介するのが本書の1つの目的であるので、完全にまとめようとするのは無理があります。本書はそういった点では論点が多すぎて、まとまっていない感を受けますが、それは上記の理由、つまりベーシックインカム構想に関連した全ての人、思想、立場を紹介する、というスタンスから言って当然の事ですので、それは本書の欠点とは言えないでしょう。

筆者の考え方・論調が、ややベーシックインカムに偏っている感じもしますが、それが、歴史のただの概観ではなく、筆者の主張や思い、論点整理があるために、分かりやすさを増す、という効果を持っていると感じました。

財源やその他の批判点にも満遍なく触れていますが、経済学、財政学的に深入りはしていません。しかし、ベーシックインカムの説明と、その背景の紹介が本書の目的だと思われますので、これを実現するためにどの財源を削って、あるいはどのTAXベースに増税するか、といった問題は本書の責務ではなないでしょう。

この本を元に、これを実現するためにはどうすれば良いか、を論じるのは経済学・財政学の専門家の果たす役割であり、我々一般国民、つまり有権者の仕事でもあり、そして権利でしょう。

ベーシック入門と銘打っていますが、ベーシックインカム自体を知りたい人にとっては、むしろこれ一冊で殆どの事が分かり、あとはここに挙げられた人々について独自に本を読む、運動の経緯を外国の本などを読んで造詣を深めるなどをすれば、全てのことが分かるでしょう。ですから、入門、と限定するよりも、入門〜中級まで、といった内容だと思います。


参考までに、本書では触れられていなかった課題として、考えられるものを挙げました。

労働インセンティブの実証分析:実際に生活保障レベルの給付をした時に、どれだけ労働インセンティブ・供給が減るかを、統計的に人々のグループを想定し、モデル化し計測する。

財源のシュミレーション:財源を他を削って調達した時の、効用の低下分と、この制度実施による効用の増加分のモデルを使った計測。また、増税する場合の、タックスベースの別による効果の違いの計測。

最終可処分所得の算定:全ての他の制度からの給付と、全ての税制と控除を併せて考えた上での、全要素コミットの結果の可処分所得の算定と、所得変化に対応する限界可処分所得の算定による、労働者行動の把握。

費用の計算:労働者行動を、過去の実験、経験データからモデル化し、この制度を実施した場合に人々に支払わねばならない総額の計算。負の所得税については高山(1080)、上村(200?)の研究がある。

再分配及びその他の論点の社会選択的議論:家事労働に対する支払いの是非、土地所有に対する経済哲学的論考、誰にどのように給付するか、という事の思想・哲学的是非の議論。最終的にはこれらに経済哲学的答えを出す必要がある。租税に関しては、フレッジベネフィッツの問題などを含んだ、包括的所得税や累進支出税の議論もある。また、最低賃金法に比べ、市場を歪めないという側面があるが、再分配そのものに、租税・給付の両面で市場を歪めている根本的な側面がある。この是非の議論も必要だろう。


どちらにせよ、ベーシック・インカムの考え方は既に、多くの国、政党で一般化しており、日本では新党日本がこれをマニフェストとして大々的に取り上げています。また、負の所得税の変種(労働者にのみ給付)である給付つき税額控除(還付可能な所得税税額控除、労働税額控除:WTC、就労税額控除:IETCとも)は民主党内部で取り上げられています。このように、この制度は、貧困者を救済し尊厳のある生活を保障するための、極めて実効力のある制度として、これからの国の運営方針に大きく関係して来る制度だろうと思われます。

追記:古くから貧困者問題を取り上げて来た日本共産党は、ベーシックインカムよりむしろ、生産システムの労働者共有を目指している、というのも興味深い点でしょう。



1968年の遺産 ★★★★☆
 1970年に生まれた社会政策(経済学)研究者が2009年に刊行した本。ベーシック・インカムとは、生活に必要な所得を無条件で全ての個人に個人単位で給付するという考え方である。この考えはモラル・エコノミー衰退期の18世紀末に登場し、第二次大戦後の福祉国家理念が、完全雇用を前提として、一時的なリスクには社会保険で対応し、それでも無理な場合は例外的に公的扶助を行うという形で構想されるまさにその時期に、ミードやケインズによって理論的優位性を認められていた。その後、第二波フェミニズムの影響を受けたシングルマザーたちの運動が、家事労働の無償性や性別役割分業に疑義を投げかけ、ダラ=コスタやネグリがそれを理論化したり、ガルブレイスが技術革新に伴う必要労働量の減少を指摘したりする中で、フリードマンの負の所得税案、生活必需品無料化案(ベーシック・コモンズ)も含め、べーシック・インカム型の政策がさまざまな立場から主張される。その際、べーシック・インカムが労働意欲を必ずしも殺がないことが指摘される。グローバル化に伴い、所得保障の縮小意図の下に就労を国家が支援するワークフェアが主流になる一方で、雇用の不安定化に抗する運動がベーシック・インカムを要求したり、68年的価値観を体現する緑の党を中心に、環境問題と貧困問題をグローバルな視点で結びつけようとしたりする動きも現れている。本書はこうした流れを踏まえて、税制の在り方にも言及しつつ、現在存在する制度の変革の延長線上で、日本版のベーシック・インカムを模索する。私見では、本書が多様な形のベーシック・インカムを紹介しているために、かえってそのイメージがわきにくい感もあるのだが、議論が整理され、政治運動や研究の面での意外な著名人とのつながりが分かったことは、有益であった。各章のまとめ、テキストデータ引換券付き。
「働かない権利」は生存を肯定するか ★★★★☆
ベーシック・インカム(以下BI)にかんする、学者・社会運動(アウトノミア、フェミニズム、障害者運動)の言説、経済学上の意義などが、歴史的にまとめられている。BIについてこれだけコンパクトにまとめた本はこれまで皆無に思えるから、その意味での貢献は大きい。

加えて、通常の(学者的な)BI(リバタリアン・バージョン)においては、「すべての人に平等に同じ金額を支給せよ」という主張であるが、山森の主張は違う。なぜなら、「同じ金額」では、生存を保つのが困難な者もいることを山森は分かっている。だから、アウトノミア・バージョンのほうの、「すべての個人が無条件で生活に必要な所得への権利をもつ」という主張を支持する。そして、ここまではまったく私も支持する。

ただし、山森は「労働の義務」をとらない、と言う。しかし、考えてみれば、「生きることを無条件に保障する」ならば、その「無条件性を担保する義務」はどうしても必要だ。その意味において、私は論理的には社会全体で労働の義務はある、と言わざるを得ないように思う。しかし、このことは「誰か特定の者が働く義務を有する」ことは意味しない。また、働かない/働けないという境界線も無意味だと思う。こうしたことを考えたい方は障害学研究5 (障害学研究)の特集「障害と分配的正義――ベーシック・インカムは答になるか」の議論をどうぞ。山森さんも登場されてます。
意外と退屈せずに読めるよ ★★★★☆
 予想以上に面白い本でした。もし全く無条件で一人一人に月額八万円とか十万円(子供は半額)といった、飢え死にしない程度のお金が支給されたらどうなるか。先日閉じた公設派遣村はもちろん必要無くなるし生活保護も基本的には要らなくなる。年間三万人を超える自殺者はどうなり犯罪は減るのかどうか。「働かざる者も」のんびりと「食える」のだから世の中はすっかりダラケてしまい、中流以上の心ある人々は嘆き悲しむのか。はたまた金持ち達は貰っても「こんな金は無駄だ」と言って靴底で踏みにじるのか。貴方はいったい世の中どうなると思います?
 私は案外うまく行くのではないかと思います。人は働かずに食えるからといってそんなに何もせずにおられるものではない。それぞれに「飢え」に追い立てられないような形で働き、そして自殺・犯罪・マインドの問題などはおおむね好転するのではないでしょうか。
 ただどうしても残るのは財政問題と、繰り返しになりますが「働かざる者食うべからず」という人々の生活の根幹をなす倫理・道徳観だと思います。
 ある意味どきっとさせるような問題提起を含んだ本。新書ですから大したページ数ではありません。あなたも僅かな時間、脳みそにちょっと寄り道をさせてみてはいかがでしょうか。