Slow Man
価格: ¥2,736
写真家ポール・レイメントが自転車の事故で片脚を失ったとき、彼の孤独な人生は選択の余地なく決定的に変わってしまった。ポールは義肢を頑固に拒んで、オーストラリアはアデレードの、一人暮らしのアパートに戻るが、他人の世話にならなければいけないことが気詰まりだ。60年の人生を振り返り、しばらくは絶望とあきらめに打ちのめされるが、看護婦のマリアナに恋している自分に気づき、元気を取り戻す。マリアナはクロアチアから来た素朴な女性で、外国で家族を養おうと必死だ。どうやってマリアナを振りむかせようと考えるポールのもとに、エリザベス・コステロという謎めいたライターが訪れ、ポールに積極的に生きるよう促す。
クッツェーはこの新作で、人間らしさや年をとることの意味を考え、私たちがいかに人生を生きてきたかに思いをめぐらす。あらゆる文学の傑作がそうであるように、『Slow Man』は疑問を問いかけても、滅多に答えは持たない小説だ。それは真実を求める男のポートレートである。ポール・レイメントの事故は、彼の人生観を変え、その結果、彼は私たちすべてに共通の問題を考え始める。よき人間であるとはどういうことか? 人生において、真に意義のあることとは何か? 愛され大切にされていると感じることが、より重要なのか? 私たちが呼ぶ“家”とは、どんな所と定義されるのか? 妥協のない澄んだ声で、クッツェーはこうした問題に取り組む。そうして完成したのは、ページをめくるごとに驚きがあり、深い感動を与える愛とモータリティの物語である。