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風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (岩波文庫)

価格: ¥903
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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良い。 ★★★★☆
上の方も言っておられる通り『暗い青春』が収録されていないのが個人的に少し残念なのであるが、
あとは殆どの主要自伝的小説が網羅されている。
「私小説」ではなくて「自伝的小説」であるところがミソであるらしい。
講談社文芸文庫版では読めない作品もあるので、是非併せてお買い求めになられたし。
小説の手前の混沌で人を打つ ★★★★☆
 本書に収められた随筆に於いて、坂口安吾は文学に対する己の信念を豊かに結実させている。しかし、彼の小説に於いてその信念通りに事が運んでいるとは言い難い。否、信念は確かに筆の先から奔流となって流れ出ているのだが、それに形(人物、出来事など)を与えたものの整理がつかず、混乱を来していることが多い(ファルス作品はその特性上、整然とした形を与えられている)。
 しかし、このことで彼の小説を批判するには当たらない。これほどまでに自我と厳しく格闘し、その生を惜しげもなく小説に注ぎ込んだ作家はそういないからだ。その営為の痛々しい跡の最も明瞭に晒されているのが、自他ともに失敗作と認めている『吹雪物語』であろう。また、自殺した牧野信一や太宰治について語った作品(「オモチャ箱」「不良少年とキリスト」)に於いては、亡き友人に対する感情が痛ましい跡を見せている。
 坂口安吾にとって随筆は、小説に向かう己への発奮剤だったのかもしれない。己を焚き付け、他者に斬り付け、その刃で己が斬られ、その苦闘の傷の癒えぬうちに小説に向かう。しかし、そのようにして向かった小説は建築物とはならず、多くの場合混沌たる様相を呈している。
 坂口安吾の小説は、文学のふるさとたる「氷を抱きしめたような、切ない悲しさ、美しさ」(「文学のふるさと」)から、小説という建築物へ至る過程の混沌そのものだったのかもしれない。それらは建築物としての幾何学的美しさには欠けているのかもしれないが、しかし、それもまた紛れもない小説であり、混沌の激しさ、美しさで人を打てる作家はそう多くないのだ。
安吾文学の核心 ★★★★★
安吾の自伝小説はどれも静かなトーンをもち、それでいて胸をかきむしりたくなるような切なさに満ちている。「生存それ自体が孕んでいる絶対の孤独」(「文学のふるさと」)が、作者の内面にくろぐろと横たわっている感じがする。
この自伝選集には、長島萃や葛巻義敏が登場する「暗い青春」が入っていないが、かわりにその原形で葛巻をメインに据えた「青い絨毯」が収録されている。長島については「篠笹の陰の顔」に結晶化されているので、この2作で「暗い青春」の世界をブローアップした印象がある。編集の妙というべきか。
おおよそ安吾の成長過程に沿って編集されているので、巻末の年譜と対照して読めば2倍楽しめる。収録作は以下のとおり。

ふるさとに寄する讃歌
石の思い
おみな
風と光と二十の私と
二十一

篠笹の陰の顔
青い絨毯
天才になりそこなった男の話
流浪の追憶
二十七歳
いずこへ
三十歳
魔の退屈
(このあと、自伝とは少し違う参考作品がまとめられている)
勉強記
オモチャ箱
私は海をだきしめていたい
わが思想の息吹
 *解説&年譜(七北数人)