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組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: ダイヤモンド社
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軍事学と経済学の見事な融合 ★★★★☆
 「なぜ上司とは、かくも理不尽なものなのか」の菊澤氏による日本陸軍の研究書である。本来は経営学者である菊澤氏が、防衛大学で教鞭を執った際に、WW2での旧日本陸軍の行動についても経営学の理論で説明が付くことに気が付いたとのこと。
 その理論は先の書と同じなのでここでは省略するが、限定合理的でしかない人間が自分は完全合理的であると錯覚することにより、組織としては非効率で非倫理的な結果を招くのである。この不条理の例としてガダルカナル戦・インパール作戦を分析している。逆に限定合理的なことを自覚して効率的・倫理的に不条理を回避した例としてジャワ軍政・硫黄島戦・沖縄戦を説明している。
 硫黄島、沖縄での戦いは悲惨な例ではあるが、実は最も米軍に損害と恐怖を与えた最良の作戦であり、ガダルカナルの白兵戦は上層部が優秀で合理的だったから失敗したという結論はユニークで一読の価値がある。優秀で合理的な人物の作戦が失敗し、誤った指示をはぐらかして現場が最適解を見つけた作戦が成功するというのは非常に興味深い。
 さらに現在の企業においても同じ現象が発生していると指摘する。対策として、オープンで批判的な意見交換により新戦略を模索し、漸次的に組織を改編するアプローチこそが組織の生き残り策であると提案する。
批判的な態度。 ★★★★★
日本軍はなぜ、ガダルカナルにおいて無謀ともいえる百兵突撃を繰り返したのか、203高地の
失敗から何も学ばなかったのか?この疑問に対して本書では新制度派経済学のアプローチより、
解明を試みる。失敗の原因を人間の非合理性にみるのでなく、限定合理的な人間の特質にある
とするのは従来にない面白い解釈であると思う。

人間は常に誤りを犯すものであり、組織内部に絶えず非効率と不正が発生する可能性を認め、
それを防ぐためには絶えず批判的な態度を持つべきであり、誤りから学ぶことが大切。

日本人は仕事上において、他の国の人々より、より上司の言うことを鵜呑みにしやすい体質を
持ち、また、場の空気を感じすぎて云いたい事を遠慮しがちな国民性があると言えるのではな
いでしょうか? 

現実性に乏しくはないだろうか? ★★★★☆
 読みやすい本で一気に読了できる。経済学に縁がなかった読者でも問題なく読めるだろう。
 内容はあの話題になった「失敗の本質」に続くものである。「失敗の本質」ではその分析は多角的になされているという点が売りであったが、残念ながら当時の学問の水準では経済学・経営学の観点からの分析には問題があり、詳しく取り上げられてはいなかった。本書はこの点に絞ったもので、しかも同一の著者によるものであるために分析にもばらつきがなく、そこは評価できる。
 問題なのは、このような分析が現代の組織を見る上で応用できるのか、実際の組織改革に役に立つのか、ということだが、この点に関してはいかがなものか。私見ではいまひとつという印象を受ける。というのは、組織改革に必要なコストを考えれば、たいていの組織は現状維持という、まさに当時の日本軍と同じような「無難」な選択を取ってしまう危険がないだろうか。
 日本軍の中に、そのがんじがらめになった「組織」を改革することでうまくいった事例があったのだろうか。本書で取り上げられている今村大将、硫黄島、沖縄の例は、組織改革の例として適当とは思えない。
 面白く読めることと、現実の組織にその分析を応用して改革に役に立てる、ということとは両立しないのではないか。
衝撃の1冊 ★☆☆☆☆
ダブルKこと菊沢研宗御大による旧日本軍をケーススタディとした経営学界の最高傑作です。
ふだん、組織の中で"不条理"を感じている人には衝撃の1冊だと思います。
着眼点は良い。しかしながら学説書としての限界を感じる。 ★★★☆☆
 本書は、インパール作戦・ガダルカナル戦など従来「不可解・不条理・反倫理」とされてきた旧日本軍の行動を、新制度派経済学に基づく組織論で読み解くことにより、これらが人間の合理的な意思決定の上で生じた「誤謬」であり、同様の事例は現在の日本企業でも十分に生じうる(事実生じている事例も多数紹介)危険性を孕んでいると示唆する。
 旧日本軍、ソニー、トヨタ、拓銀等々といった非常にポピュラーな組織に焦点を当てたことにより、現代の組織論・経営論的思考を広く社会に浸透させ得る点で、本書の価値は大いに認められる。
 しかしながら、本書の大部分が旧日本軍の行動を綴った事実紹介に割かれ、コスト理論・エージェント理論・囚人のジレンマ等といった制度分析ツールの掘り下げたapplicationが十分になされておらず、結果として旧日本軍の行動が「新制度派経済理論の上では」合理的であったと確信させるところには至らなかった。
 また、最終章ではこうした「合理性に基づく非条理」を回避するための処方箋として、「批判的精神の涵養・実践」「漸次変革の実施」を提言する。事実、社内批判を取り入れることで成功した企業も多いし、何より現代サラリーマンの耳に非常に心地よい提言だろう。しかしながらこの結論には折角の前半での分析が全く生かされていない。今村中将は将校・下士官の批判を聞いたから成功したのか?牟田口中将は部下からの散々な批判を受けたが、失敗した。内部批判が尽くされた上で合理的な判断がなされたとしても、不条理は生じ得る。敢えて新制度派理論に沿って解決策を挙げるとするならば、組織変革による取引コストの低減と情報拡大による合理的判断の確保であると思われるが、この点についての説明はなされていない。まるで「要は経営者の心構えだ」と説く本書の態度に、組織論の学説書としての限界を感じる。