被写体の魅力を余すところなく写真に収めている「世界遺産」作品集です
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三好和義氏の「楽園」ファンです。写真展にも行きますので、この作品集もじっくりと鑑賞しました。写真の色調が落ち着いており、深みや陰影に富んだ作品に惹かれています。
外国での撮影が多かった三好氏が、わが国の世界遺産を被写体にするという企画自体に興味を覚えました。
銀閣寺、金閣寺、天龍寺、平等院、清水寺、龍安寺、二条城等の撮影データを見ますと、盛夏の頃です。撮影には厳しい条件の下でも素晴らしい作品を生み出せる技術と感性を感じました。全作品とも人が写りこんでいません。早朝もしくは、夕刻という拝観時間をはずして撮影していますので、目障りなものがないのが嬉しいです。通常多くの観光客で賑わっている写真を目にしますので、この人のいない静寂な「世界遺産」は、不思議な空気に包まれています。それもまた本書の魅力につながると見ています。
古都奈良の法隆寺、東大寺、春日大社、興福寺、薬師寺、唐招提寺という大伽藍と自然の調和は、日本の素晴らしさと美しさの象徴のような風景と言えましょう。
三好氏は日本を代表する写真家ですから、見なれた社寺仏閣も違った視点から光を当てますと、違う力を得てその内在する魅力を世に問うているようです。景観を鮮やかに切り撮りますので、印象的な風景を楽しむことができます。
屋久島や白神山地という世界に誇れる自然遺産保護の大切さを考える契機としても本書を読んでいただきたいものです。