優しい小説。
★★★★☆
「ア・ルース・ボーイ」が青春文学の傑作ならば、「ピロティ」は団塊の世代の文学の金字塔になりうるかもしれない。
一人は引退間近の、もうひとりは新しくその仕事に就くためにやってきた新米の、アルマンション管理人の一日を描いた・・・・いってみれば、それだけのお話。
なのに、日々の出来事を語る登場人物の口調は穏やかで、それを見守るかのような(とはいえど、一人称でつむぎだされるこの作品に作者の視線は直接的な介入をしないが)作者の視線はどこまでも優しい。
それは表面をただなぞるだけのような、わかりやすい通り一遍なものでなく、酸いも甘いもかみ分けたからこそにじむ、人生の最終地点(ゴール)が見えてきた人間だからこその優しさ。
冬の小春日和のような、ほのかな温かみを感じる本です。