ノヴェライゼーションとしては失敗
★☆☆☆☆
ブラジルで空前の大ヒットとなった話題の映画の小説版。ということだが、映画はよく知られているマルセル・カミュの「黒いオルフェ」ではない。ヂエギス監督が「黒いオルフェ」の原作『オルフェウ・ダ・コンセイサォン』をもとに、全く新しく作った映画である。映画の良し悪しは、見ていないので何ともいえないが、本としては幼稚だと感じた。「躍動的なサンバのリズムの中でほとばしる狂おしいほどの愛」という内容で、もともとはギリシャ神話の悲劇なのだが、舞台をブラジルに置き換えた「黒人版」なのだ。ほとんどがアフロ・ブラジル系のスラム街での話なのに、その雰囲気は全然伝わってこないし、かといって神話のもつ神々しさもまるでない。それこそスクリーンをそのままただ説明している感じで、リズムも悪い。せっかくのサンバのリズムに乗れないのだ。映画のノヴェライゼーションとしては最悪だと思う。