著名な人類学者David Harvey氏によるネオリベラリズムの解説書ということで少し期待したのですが残念ながら期待外れでした。政治、経済の流れを幅広くカバーしているのは流石だと思うのですが、あまりにも否定的バイアスが強く合理性、説得力に欠けます。またネオリベラリズムが実は富裕層による富の搾取のための仕組み、というコンスピラシー・セオリー仕立てなのですが、特に独自の論理は見受けられず、その根拠は結果としてそのように見えるから、としか伝わってこない。市場の欠陥や乱用は全てネオリベラリズムが原因と言われると、何がネオリベラリズムなのか、解らなくなります。経済政策の具体例としてはJoseph Stiglitz氏の著書が参考になります。各国の経済政策と経済成長の関係も、他の参考文献と照らし合わせて見ることをお勧めします。経済は生きており金太郎飴的処方箋は効かないことが見えてきます。富の創造や経済発展の仕組みを真剣に考えずに本書を読むと、市場の欠陥と乱用の歴史に惑わされ、現在の日本が既にそうであるように富の再配分に焦点が集まり閉塞状況に陥るリスクが高くなると思われます。本書を通してより多くの人の関心が経済学に向かい、願わくはゼロサムでない富の創造、マーケット・メカニズムの研究等への興味が高まればと。。。