アメリカ有数の外交政策の研究者である著者による、国際社会に大きな波紋を投げかけた論文が、内容を拡大して本という形で再登場する。
最近アメリカの外交政策に懸念を覚えているヨーロッパ各国の指導者は、ニューヨーク・タイムズ紙(2002年7月21日付)が「真実の時」と表現したものに向かっていると感じている。長年に及ぶお互いの恨みつらみや緊張関係を経て、突然、アメリカにとってのほんとうの国益と同盟国の利益とが、大きく隔たっていることがわかるようになり、大西洋をはさんだ関係自体も変わってしまって、それはもう後戻りのできないところまできている可能性もある。ヨーロッパはアメリカを、強引で、一方的で、必要以上に好戦的だと見ているし、アメリカはヨーロッパを、疲れきっていて、不真面目で、弱い存在だと考えている。両者の怒りと不信感は、ますますひどくなり、さらに無理解を呼んでいる。
2002年の夏、ロバート・ケーガンはポリシー・レビュー誌の中で、この袋小路にはまり、追い詰められた両者に、互いの立場から自分自身の見直しをするよう迫った。第2次大戦後の大きく異なったヨーロッパとアメリカの歴史を追いながら、ケーガンがはっきりと述べているのは、一方は血塗られた過去から脱出する必要性から力と脅威に関する国境を超えた信念が生まれ、もう一方は必然的に力とグローバルな影響力によって「ポストモダン・パラダイス」の擁護者として進歩を遂げたことだ。このすぐれた分析は、アメリカ、フランス、日本の政府にも議論を呼ぶことになるだろう。必読の書である。(Book Description)
オバマ政権の今こそ読まれるべき書
★★★★★
今更ながら読んでみた。ブッシュ政権時代に世界的ベストセラーとなった書物だが、民主党のオバマ政権が誕生するや否や、ネオコンという言葉自体、全く聞かれなくなってしまった。本書も敢えなく絶版となっているようだ。しかしながら、本書を単なる一過性のベストセラーものと考えるのは大きな間違いだ。ネオコンという政治勢力自体が消滅したわけでなく、本書に代表されるような政治思想を有した政権が米国に再び登場する可能性は十分にあるし、そして何よりも、筆者は政治思想のバックグラウンドを有した研究者であり、独自のロジックでいわゆるネオコン的な米国の外交政策を構築しているからである。特に後者のポイントが重要で、国際政治史、ヨーロッパと米国の比較政治、そして政治思想の知識を駆使した立論は読み応え十分。私は筆者の議論はいかにも米国至上主義的であり、また、ヨーロッパへの蔑視に尋常でないものを感じたが、他方で、筆者の議論、特に軍事力の至上性に関する議論には危険な魅力を感じた。
現在のオバマ政権は筆者が言うところの「ポストモダン」な、国際法が遵守され、道義がものをいう世界への仲間入りを目指しているようにも見える。しかしながら、現在でも共和党には筆者のような思想の持ち主が存在しているし、さらに筆者によれば米国の軍事力信奉、単独行動主義は米国の歴史に内在してきたものである。オバマ政権でネオコン的な要素がどのように発露されていくのか、要注目であろう。本書は、オバマ政権の今だからこそ読まれるべき書物である。
読み直し
★★★☆☆
とても説得力のある文章で、アメリカの立ち位置、
基本理念が説明されている。
つまり「アメリカの大儀は全人類の大儀」であることの根拠。
非常に淡々とした語り口であるからこその面白さがある。
なんだこりゃ
★★★★★
のっけからトンデモ本の匂いがプンプン漂ってきてたのだが最後迄トンデモ本だった。じゃあ読まなけりゃいいじゃん、と思うのですが、改めて、「理想思想というものを、例えば、欧米日本といったパワーバランス的なくくりで主張する事がどれ程意味のある事なのか疑問でしかない」と感じたっス。それが秩序を派遣した代償として国民を苦しめてるとしたら世話ねぇ。
この「パワーバランス的なくくりで内在的な理想を、対外的に実力行使を含め主張する事が、どれ程意味のある事なのか疑問でしかない」という思想こそ、日本の寛容の精神であると考えられます。日本人はWW(笑笑)II以来謙虚なんだよ馬鹿野郎。と考えられてよかったので星5つ。
ここ迄一貫してると気持ちいい。ただ、仲良くやろうぜ。頼むよ。マジで。ちなみに最近はもう恥かしい「死語」の領域に踏み込んだ、「グローバル・スタンダード」であるが、そもそもがこの本に書かれている内容の事であった事がわかる。会社でまだ、そんな恥かしい事を言っている人には、この本の内容を教えてあげよう。必ず感謝されるだろう。
Manifest Destiny
★★★★☆
以前から読もうと思っていたがなかなか時間がなく今日にいたってしまった。感想は「明白な宿命」の主張本だったんですねという事ですかね。また保守主義という言葉は時代や情勢によって変わるので,これが10年程度前のネオコンサバティズムの考えかいなという程度で今とあまり変わっていないのかなという印象でした。結構よくまとめられていて,分厚くなく良い本だと思います。
今だからこそ興味深い
★★★★★
大変興味深く読んだ。
本書の内容が全て当てはまるとは思えないが(つまり、プロパガンダのにおいがプンプンするので)、強者の論理であると言う事に異論を挟む余地はないだろう。
数ヶ所で歴史の大きな流れというものを、自国の都合に良いように解釈、講釈するところがみられるが、この強者の理論こそ大国たる所以なのかも知れない。
また、欧州諸国の間違いをとうとうと説いているが、いまやこの間違いこそ世界の常識で、アメリカの理論こそ世界の非常識になっているのを正す事なく、強国への手段を選ばないところには底知れぬ恐怖を感じる。
しかし、アメリカを導くための理論は世界を席巻し、やはり日本は頷くしかないのである。現代と邦題が全く違うのは強烈な皮肉である。