On Beauty
価格: ¥1,416
「真にヒューマンだ、まさに自分たちだ、すばらしい」スミス3作目の小説で、ある人物は考える。不倫にアイデンティティの危機に感情の窒息。人種間と人種内の世界的な紛争や、狂信的な行為。この作品は、大人であることの悲しい面を、21世紀的に探る大胆な試みだ。スミスのデビューヒット作『White Teeth』(2000)同様、この作品もまた、2つの全く異なる家族間の衝突から生まれた話だが、そのプロットは明らかに『ハワーズ・エンド』をなぞらえたものだ。英国のWASPのハワードと、アフリカ系アメリカ人のキキの夫妻。このリベラルで混乱したベルシー家の福音派に傾倒する息子が、保守的で整然としたアングロ=カリビアンのキップス家の美しい娘に恋をする。二人のうまくいかない恋を通じて、両家の女家長、キキとカーリーンは大西洋を越えて理解しあうようになる。だがそれぞれの夫、ハワードとモンティは、二人とも大学教授で、架空のマサチューセッツの大学で文化的争いに忙しい。そんな中ベルシー家ではハワードの浮気問題が持ち上がり、もう一人の息子レヴィは宗教から政治へと転身を図る。誰もが芸術を論じ、誰もが性的かそうでないつながりを求めている。単純だがすごくおかしいのは、レンブラント研究者のハワードは、レンブラントが嫌いだ。にも関わらず、作者スミスはこの巨匠の傑作について、雄弁に論じている。娘のゾラを通じて描かれるのは、知的価値を行動に移すことの困難だ。この本は手の込んだフォスターへのオマージュとして書かれており、人物や心配事や失敗がきれいにまとまりすぎているきらいがある。このことが、何が人生を複雑に(美しくも)しているかというスミスの優れた洞察に水をさしているが、結果的にはよく書けている。「お互いの中にシェルターがあるのよ」カーリーンはキキに言う。フォスターの『Only Connect』からとられたこの言葉は、この小説で新しい意味を得ている。
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