日本人として生まれ、日本人として生きてきたけれども、われわれは一体日本の何を知っているのだろうか？　欧米からきた音楽は巷にあふれているのに、われわれの周りには本来われわれの中で長い年月培ってきたはずの文化がすっかり消えてしまっている。

このＣＤを買って何も知らない自分と出会った。私はこの音楽について何もわからない。外国人に聞かれても説明できない。鑑賞のポイントもわからない。まったく日本人として情けない。私だけでなく多くの日本人がそうであろうことがもっと情けない。

精神論的に愛国心を育てる教育を唱える前に自国の歴史や文化を理解し、しっかりと地に足のついた日本人としての誇りを持ち、同時に他国の歴史や文化を尊重する人間を育てる教育こそ重要であろう。

こういったＣＤあるいはＤＶＤが学校教育の場で使われ、各地の図書館に置かれ、多くの人にふれられ、愛されるようになれば、日本の伝統文化は今後とも長く生きつづけることになると思う。

雅楽とは縁のない生活を送って来たのに、なぜだか懐かしい気がした。雅楽を聴いた外国人でもそう思うことがあるらしい。千年前の音色というものは、人類共通のＤＮＡに共鳴するのかもしれない。雅楽が注目されるようになったのは、東儀秀樹氏によるところが多いだろう。東儀氏の音楽も素敵だと思うけれど、その源泉になった雅楽を聴いてみるのもいいかもしれない。このＣＤには有名な「越殿楽」が収録されている。そして演奏者の中に東儀秀樹氏も名を連ねている。