これはいい本
★★★★★
柴田氏は翻訳のエキスパートで、高橋氏は小説のエキスパート。それでいて、柴田氏は小説も書くし、高橋氏は翻訳の経験もある。両者がたがいの専門について高度な理解と敬意と好奇心をもって語り合うので、たがいにどんどん面白い話が引き出され、深められていく。最高のインタビュアー同士の組み合わせの対談なのだ。
高橋さんが選んだ「ニッポンの小説」30冊、柴田さんが選んだ「海外に紹介したい現代日本の小説」30冊は必見。日本だけでなく世界の小説に精通するおふたりによると、現代日本文学のレベルは世界水準から見ても相当のレベルとのこと。水村美苗に聞かせたいものだ。
面白かった気がします。
★★★☆☆
この本のタイトルは『柴田さんと高橋さんの小説の読み方、書き方、訳し方』らしいのだが、でも本の表紙を一見すると『小説の読み方、書き方、訳し方』ってタイトルだと思っちゃう。ところがよく見ると右上に小さなフキダシがあって、「柴田さんと高橋さんの」と但し書きがある。よく見ないと見落としちゃいそうだし、見えてても小さな文字だから、そんなに大切な但し書きとも感じず無視しちゃうかもしれない。しかし、この但し書きがないタイトルだと、すごいエラソーだよね。
いや、但し書きも2通りに読める。「柴田さんと高橋さんの」が「柴田さんと高橋さん流の」という意味なら、それなりに謙虚な空気が漂うのだが、「柴田さんと高橋さんが教える」と取るなら、これは上から目線のタイトルですよね。
で、読み終えた感想としては、幸いにと言うか当然と言うか、あんまりエラソーな印象はないですね。その代わり、「読み方、書き方、訳し方」の秘訣を教えていただけるという内容でもない。
じゃあどういう内容かって言うと、印象に残ったのがp222の柴田の発言で、「若島正さんが僕のエッセイ集をほめてくれて、僕のエッセイというのは、読むとすぐ何が書いてあったか忘れるって言うんです。それでなぜ忘れるかっていうと、教訓とかメッセージにまとまらないように努めているから」だという件り。読んでるときはいろいろ発見もあって、教訓とかメッセージも受け取ったような気がしたんだけど、読み終えたら全部忘れちゃった。
二人の「小説日本一」による対談集
★★★★★
日本で一番小説について考えた高橋さんと日本で一番丁寧に小説を翻訳した柴田さんによる対談。僕的に。
二人のお話を伺っていると、小説を読みたくなるから不思議。
本書の170ページで高橋さんは「〜パブリックイメージだと中上健次が野蛮で天才肌、大江健三郎さんは秀才で理知的となるけど、逆だった〜」といっております。考えてみれば、たしかにそうかもしれない…
小説についての今とこれから。もちろん、アメリカ文学についても造詣の深い二人なので、そのへんのところもばっちりです。
買いです。
★★★★★
両者による小説をめぐる対談集です。両者ともどもの愛読者である自分のようなものにとっては、たいへんリーズナブルな一冊になっています。また、それぞれがセレクトした翻訳小説ベスト30と、翻訳してほしい日本の小説30のリストが掲載されていて、それがまたいかにもな感もありますが、小説家や翻訳家としての自身の在り方とも関係しているようで興味深かったです。ロシア文学なんかどちらにも一冊も含まれていないのはちょっと笑えました。