ただし、本書は単なるバブル批判書ではない。著者はシリコンバレーの世界的ハイテクビジネス誌「レッド・ヘリング」の編集者であるパーキンス兄弟。マイクロソフトのビル・ゲイツ、アマゾンのジェフ・ベゾス、ヤフーのジェリー・ヤンをはじめ、ネットビジネス界に膨大な人脈を持つ事情通だ。この本の一番の魅力は、ネットビジネスのインサイダーたち―― ベンチャーキャピタリストや投資銀行―― にスポットが当てられていることである。ネットビジネスに限らず、アメリカ経済のキープレイヤーである彼らの内情をここまで描いた本はないだろう。また、自動車やPC、バイオテクノロジーなどの黎明期を引き合いに出し、バブルはアメリカに新しい市場が現れたときに起こるゴールドラッシュのような必然的現象だと指摘する点も興味深い。IT革命が声高に叫ばれ始めた1999年に、日本のインターネット株も高騰した。監訳者である斎藤精一郎のあとがきにあるとおり、期待先行の日本のネットバブルはアメリカの投影に過ぎない。アメリカのそれがいずれ崩壊するとすれば、日本経済も無関係でいられないのは明らかだ。投資家は言うまでもなく、来るべきIT時代に備えるためにぜひ読んでおきたい1冊である。(斎藤聡海)