1960年、年収1万500ドルのエンジニアとしてGEに入社したウェルチは、自分の最初の昇給が他のみんなと変わらないことを知ると、「その他大勢の中から抜け出す」必要を身にしみて感じる。彼は会社の官僚組織を離れ、マサチューセッツ州ピッツフィードで20億ドル規模のGEの1事業を監督するあいだ、セーターとジーンズ姿で過ごし、高級ホテルとも無縁だった。こうしてGEの本拠地であるコネチカット州フェアフィールドから離れて数年間を過ごしたのち、ウェルチは彼を後継者にと考えていた当時のCEO、レズ(レジナルド)・ジョーンズに呼び出される。ここから彼の会社人生における最も多難な時期が始まった。ダークホースのウェルチが官僚的な組織の中でCEOの座に就くには並々ならぬ努力が必要だったのだのだ。とはいえレズに気に入られたことで、新しいボスとなってGEを変容させていくことは確実となる。
ウェルチは「中性子ジャック」と呼ばれた時代、つまり事業を「強化するか、売るか、さもなくば閉鎖する」戦略の一環として10万人を超える従業員を解雇した時代を回想し、企業の将来における収益の基盤づくりのためにRCAを買収した経緯に触れる。誤算もあった、とジャックは率直に認めてもいる。「Too Full of Myself」の中で、彼は最大の失敗、つまりGEの文化とは相容れない企業、キダー・ピーボティーを買収したことについても語っている。さらに後継者選抜の込み入った作業やハネウェル買収といった最近の興味深い事実についても詳しく語る。
途中に織り込まれている「Short Reflection on Golf」などのエピソードは、ウェルチの競争心の強さや、彼の人生のなかで友人との関係がいかに重要なものであるかをよく物語っている。必ずやビジネス書の定番となる本書は、情熱と、人生に対する飽くことのない欲望とで満たされた、きわめて個人的な記録である。