シリアス劇とドタバタ劇と
★★★★☆
2つの中編小説を併録しているが,「スターバト・マーテル」は結構深刻な話であるのに対し,「エメラルド アイランド」はドタバタ喜劇で,傾向は全く違う。敢えて言えば,若くはない女性が主人公であることと,海外への単身赴任が長い中年男性が出てくることとが共通点か。
私は,気楽に読めたという点で「エメラルド アイランド」が好き。披露宴を兼ねた新婚旅行だというのに,新郎を全くほったらかしにして自由気ままに振る舞う新婦とそのママというキャラクターが,非常にリアルに描写されていた。いくらフェロモン系でも,こんなのと結婚したら大変だと思うのだが……。
秀逸ですが…‥優等生の恋愛?
★★★☆☆
篠田さんの本は本当に好きなんですが、この表題作は正直あまり面白くなかったです。
仕方のないことなのかもしれませんが、出てくる男性が『夜のジンファンデル』や現在毎日新聞で連載されている男性とものすごく重なってるんですよね。エリートで勉強もできて語学は堪能、ルックスもどちらかといえば良い方で、合理的で冷静にものを捉えて、決して自分の感情を表には出さないような。今回の表題作に主人公には実はそうした表面的なエリートとは一線を画してるんだけど…それがあまり意外じゃない。女性の描き方はものすごく多様なのに、不思議と男性像が画一化している気がします。
恋愛小説をあまり書きたくないのだけど、こういう昔の恋愛に憧れる女性も多いから出版社の要望で嫌々書いてるのかしら。少し退屈でした。
大人向け作品。
★★★★☆
離婚歴を持つ男性と結婚した40代の女性の、
潔い行動・言動に興味をひかれ、面白く読みました。
淡い思い出を持つ同級生と30年ぶりに再会し、
止まっていた時計が動き出すというストーリー展開は、
一見ありがちに思えましたが、
安っぽさなどはありませんでした。
むしろ崇高ささえ感じるほどで、「スターバドト・マーテル」という、
初めて聴くクラシック音楽のタイトルが、
そんな気にさせたのかも知れません。
私の予備知識がなく、2編からなる一冊だったことには驚きました。
てっきりこのお話が最後まで続くのだと思っていたので、
突然終わってしまったことには、
正直肩すかしを食らってしまいました。
乗り気せずに次の「エメラルド・アイランド」を読み始めたのですが、
これが意外なほどテンポが良く、
また前向きな作品で爽快でした。
全く毛色の違う2作品を楽しめ、お得な本とも言えます。
まあまあ面白かったです!
★★★☆☆
時々、手にする篠田節子さんの新作です。
今回はスターバトマーテル・エメラルドアイランドの2編が入っています。
乳癌をきっかけに生と死を見つめる彩子の“静かな哀しみ(スターバト・マーテル=聖歌の題名)”、
心の翳りが丁寧に描かれています。
がむしゃらな若さはなく、人生を達観するまでには至らない40代の彩子だが、
昔の男友達との再会で、何かが変わっていく……。
落ち着いた文体でじっくりと読めました。
どこか冷めた彩子に共感出来る部分もあり昔の男友達、
そして夫との関係が気になり最後まで一気に読めます。
もう1つの作品は友人の海外結婚式に参加した主人公のドタバタを描いた
痛快コメディー「エメラルド・アイランド」
こちらは奇想天外なストーリーで前作とは全く趣が異なる作品。
こちらもある意味先は気になりました。