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中華中毒―中国的空間の解剖学 (叢書メラヴィリア)

価格: ¥3,990
カテゴリ: 単行本
ブランド: 作品社
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内包された野蛮 ★★★★★
 ウォン・カーウェイの映画を引き合いにだして「香港の速度」を語る序盤からしてノリがいい。一八四一年、アヘン戦争の最中、イギリス人たちによって分譲された香港島。それが、交易拠点として活動しはじめ、時代が下るにつれ、台頭してきた中国系の商人たちに押し出され、西洋人の居住区が都市の端ほうへと端のほうへと追いやられ、ついにはほとんど駆逐されてしまう様子を、何年か前に九龍城砦の一室にたまたま寝泊まりした体験とともに手際よく記述していく。

 続いて書かれるのは、紫禁城的洛可可(=ロココ、と、読むらしい)世界であったり、毛沢東の寝室の話題だったり、道教的な世界観から視や盆栽や奇岩についての考察であったり、「ゴジラが中国に上陸したとしたらどういうルートをたどるのか?」というシミュレーションを、1966年、1977年、1985年の三通りに分けて考えてみたり、「模倣される存在」としての紫禁城、それは中国的建築であると同時に、「中華思想」の影響がどのように受容されているのか/いないのか、というバロメータにもなるわけだが、ベトナムのフエや李氏朝鮮のソウル、沖縄の首里などの例に対して子細に検討を加えていく。検討を加えた上で、その章の最後に、「中華」の中心に位置する筈の清朝の皇帝が、実は同時に「夷(=遊牧民)」の諸族を従える大カーンであることを活写する。それも、本場よりもずっと硬直した朱子学の信徒である朝鮮の使節団が、清朝の避暑地である熱河での胡虜の饗宴の中心にいる皇帝を目撃する様を活写するととによって……。

「建築」とその建物を巡る空間を見つめ、それについて考察することによって、大まかに分けても「儒教/道教」の二つの基本原理の潮流を、その場その場で都合良く使い分ける包容力とバイタリティをもつ「中華」という文化体系について様々な角度から検証していく、ちょっと他に類例がない書物でした。

みんなチャイナジャンキー(オタク)だった、かつて。 ★★★★★
ヨーロッパ人とかアフリカ人とかを平気にそう呼ぶくせに、日本人が自分のことを「わたしはアジア人です」と呼ぶことはめったにない。でも、それは、日本人だけではない。韓国人もベトナム人も、そして、中国人も同じ。ところがある意味で「中華人」とは呼べるかもしれないのだ。中華文明が近隣諸国に与えた影響力は、知れば知るほど、いやになるぐらい圧倒的で多岐にわたっている。この本はそういった中華文明の大きすぎて目に余る部分、つまり「中華的空間」なるものを建築学的に解明したもので、とても珍しい内容となっている。とくに、ヨーロッパのヴェルサイユマニアに対する極東の紫禁城マニアの嗜好を多くの図版で解説してあるのには感激した。