本書は、経営上の重要な意思決定を、素早く、正確に、自信を持って行うための実践的な指南書である。著者の2人は、行動意思決定学の世界的な指導者であり、ヒューレット・パッカードやIBM、ユニリーバをはじめとする100社あまりの顧問を務めてきた人物。意思決定のプロセスを、「フレーミング」「インテリジェンスの収集」「結論の導出」「経験からの学習」の4段階に分類し、あらゆる意思決定に適用できるテクニックやツールを紹介している。また、シェル石油やペプシコなどが過去に行った意思決定に関するエピソードの数々も掲載されている。
意思決定のプロセスは、練習を積まない限り完全に自分のものにはならない、という視点に立ち、エクササイズやちょっとした質問シートを各所に織り込んでいる点が、本書の特徴である。そういった意味において、本書はトレーニング教本的な要素が強い。また、行動意思決定研究の学術的なアプローチによる記述が多く、直感のあいまいさや勘違いを鋭く断裁する論調は、爽快感さえ与える。
既存の意思決定に関する著書と比べて、特出すべき新しい概念があるわけではないが、意思決定のトレーニング本としては一貫してまとまりがあり、扱いやすい内容であるといえよう。
経営者や役員はもちろん、若きプロジェクトリーダーにも一読をおすすめしたい。(朝倉真弓)