種の起源で進化の事実を説明したダーウィンはさらに20年,ついに人間についての説明を公刊する.本書IIは性淘汰について.なんとダーウィンは人種の存在について性淘汰から説明しようとしている.しかもこの説明の是非の決着はまだついていない.(興味のある人にはミラーの「恋人たちの心」が大推薦)
内容についてはもちろん現代の水準から見て未熟な部分もあるが,しかし驚かされるのはむしろ現代の進化生物学の水準からみてもなお輝きを失っていないことである.非常に優れた考察が随所に光るところは数々の学者が賞賛しているとおりであった.
また精神の巨人が前人未到のことを深く深く考えているその跡をたどるのは読書,特に古典を味わうの真の醍醐味のひとつ!であろう.
時代精神(ダーウィンのヴィクトリアンだけでなく現代に生きる我々の時代精神も含めて,)についても深く考えさせる.
訳も大変すばらしく,解説も非常に水準が高い.言うこと無しである.
このシリーズは第3巻の後なかなか続かないが是非続けて欲しいものだ.