ホピ銀細工師になる為に必要な事が書かれている。
写真がもっとあればな、と思ったが
文章や刻印リストなど、興味のあるものが
書いてあり、ホピ銀細工師になりたい人には
読んでもらいたい。

　北米先住民インディアンは、熟達した工芸文化を持った民族だった。彼らのつくる手織物、籠細工、陶芸や壁画は、大自然の息吹を感じさせる意匠で満ち、かつ、高い精神性に裏打ちされた表現様式を持った、第一級の工芸作品である。ヨーロッパ人との接触は悲劇以外の何者でもないとはいえ、金属の使用を知ったことは、ささやかな幸福をもたらしたといえるかもしれない。当初は農耕のための鍬や斧などの道具類から始まった金属加工は、やがて銀細工制作へと発展していった。しかし、その歴史はわずかこの100年足らずの間に起こったことにすぎず、とりわけ今にいたるホピ銀細工がオリジナリティを確立したのは、1930年代から40年代にかけてのことだというのには、ちょっと驚かされる。

　創り手の中に受け継がれてきた美意識とものを創ることの技術と情熱。そうしたDNAを持った人間による作品の証しとして、彼らは作品に刻印をしるすようになった。本書の原題は“Hopi Silver: The History and Hallmarks of Silversmithing” であり、本の前半は、多数のカラー図版とともに、歴史と作品の紹介に充てられているが、後半、全体の三分の一以上を占める刻印のリストは重要な資料だ。この刻印がまた、ユニークである。そして、銀細工作品同様、美しい。
　出来るだけ多くの方々に、このすばらしい美術工芸品の世界を知っていただくことを願ってやまない。