神々に人格を吹き込んだ大河ドラマ ―神話から歴史へ―
★★★★★
安彦良和氏の作品群は、ひとえに「敗者復活戦」の物語だ。しかもカッコいい。
今回は、なんと『古事記』『日本書紀』の神々を人格化するという手法で、読む前は「トンデモ本にならないだろうか・・・」と思っていたが、まったくの杞憂だった。
同じくギリシア神話をもとに描いた『アリオン』は、むしろエンタテインメント性の濃い一人の少年の冒険物語であったが、この『ナムジ』はまさに歴史を描いている。学者先生達の間で延々と繰り広げられている、単なる邪馬台国の“畿内説”“九州説”に着地せず、想像力豊かにしながら、視点はしっかり当時の地政学を見据えている。そこへ「安彦良和流」ともいえる、あの魅力的な絵のタッチが加わるのだ。文庫版で全四巻、徹夜で一気に読んでしまった。
難解な文字でしかお目にかかれなかった神々に息が吹き込まれ、生き生きとした歴史のダイナミズムが渦巻く。当時の支配階級(館衆)が朝鮮半島からの渡来系の人々であり、なおかつ混血の進んだ倭人というのは、最新の歴史的研究から見ても納得がいく設定だ。
歴史、特に古代日本史が嫌いだという人にもおすすめしたい。原始の日本は、決して遅れた“海の孤島”ではなく、実に国際的豊かな時代だったことに蒙を啓かれるだろう。
さて、主人公のナムジは、やはり熱血漢の敗者。若気の至りで、力によって“成り上がっていく”魅力もさながら、野心を捨てた中年の「ヒゲだるま」になっても、人間的な彼の魅力が新たな形で甦る姿に感動する。
物足りなさが残る
★★★☆☆
古代史の解説を織り交ぜながら展開していく。歴史を学びたくて読む人にはあっという間に読めてしまうので2巻が読みたくて仕方なくなるでしょう。姫の一方的なロマンスがアクセントとして効いてます。
自身の歴史的民族的出自に自己同一性を確認できる快感
★★★★★
これまで何度となく「古事記」を読んだがどうにもピンとこなかった。
すとんと腹に落ちたのはこれを読んだ瞬間から。
「学術的屁理屈」神話に血を通わせ「神話」本来の息づかいを現代に蘇らせた傑作。
素朴な疑問。
★★★☆☆
安彦氏は、他の作品からみても階級闘争史観、マルクス主義に偏っているように思えます。この作品も、天皇家の系図を朝鮮に求めているようですが、原住日本人がかなり貶められていることに少なからぬ不快感を覚えました。日本統一の権力の源流が朝鮮にあるのなら(中国大陸にあるとしても)、最も重要な言語が日本と他者でこれほど異なっているのはなぜでしょう?
ちょっと邪道な読み方。
★★★★★
安彦キャラの少年のふくらはぎの色っぽさ。(サービスカット多数…)古代史を知らなくても、主人公ナムジの物語として読めるので大丈夫。もちろん古代史ファンも楽しめます。神話の時代なので人によって解釈も違うと思いますが、安彦版古代史、なかなか面白く読めました。古代史ファンにも初心者にもおすすめです。