なんでもかんでも最後はアメリカですか、そうですか。
★☆☆☆☆
筆者は「経済学者」という肩書きをもち、大学で教鞭をとっているが、本書を読めば、その肩書きがうそなのではないかと疑わしく思えてくるはずだ。だって変なんだもの。
筆者はかねてから正統派経済学についての疑念を表明しており、結果の成否はともかく、表明すること自体はそんなに悪くない。もしかするとものすごいものが出てくるかもしれないから。とはいえ、試みが成功しなければそれはもはや正統に対する異端ではなく、単なる電波であると言わなければならない。この著作についていうならば、攻撃している正統派経済学よりもうまく現象を説明しているようには見えない。
この著におけるポール・クルーグマンに関する記述は、ある意味出色の出来で、クルーグマンの理論的背景をほとんど考慮することなく、少ない状況証拠と奇天烈な推論で、彼の背後に潜むアメリカの陰謀を抉り出してしまう。ジャンルは違えども、超心理学本や超科学本などと構造的に類似するやりくちである。・・・笑ってよろしいか?
この本は著者のアメリカへの憎悪と、陰謀史家としての資質が最大限に発揮された著であると私には思える。私は、本心ではこの素晴らしい著を最高度に評価したいと思っているが、世間および本人もこの書の潜在的価値を理解しておらず、経済学者の著作・学校の教科書とみなしている。残念ながら、その基準に従えば、本書は★1つにも届かないのだが、・・・それは、世間がこの書の潜在的価値を理解しておらず、また、著者の陰謀史家としての資質を読み間違っているところに起因するように思われる。