いったん読み始めたらやめられない世紀末後の殺しのゲーム
★★★★★
世紀末後のアメリカ合衆国は、残酷な支配者層が住むCapitolと労働者層が住む12の地区で成り立っている。過去に反逆を試みた労働者層への見せしめとして、Capitolは毎年各地域から男女2人の子供(12歳から18歳)を選出させ、「The Hunger Games」というゲームを戦わせる。計24人の子供たちは、コントロールされた森に放たれ、そこで互いを殺しあう。最後に勝ち残った者は一生困らないだけの富を与えられるが、あとの23人の運命は死である。
貧しい第12地区代表は、16歳のKatnissと父の死後に助けてくれたパン屋の少年Peetaだった。彼はCapitolの残忍さに屈してゲームの駒になり人間性を失うことは拒否したいと打ち明けるが、それはKatnissの弱みにつけこむ戦略なのか?生き残るのが一人だけという状況になったら彼女は故郷に残してきた妹を思い出させる12歳の少女Rueを殺せるのか?
1984年、Brave New World、The GiverといったSFのクラシックを連想させるが、今流行のSurvivorといったリアリティTVショーの痛烈な風刺はとても現代的。サバイバルの才能があるヒロインは心優しいところもあるが簡単に他人を信用せず、感傷的な判断もしない。心理スリラーや冒険小説の要素、そして(ホラーではないものの)スティーブン・キングを連想させる怖さもある。いったんゲームが始まったら、最後まで手に汗を握って猛スピードで読み終えることまちがいなし。
SFファンの大人が読んでも十分満足できるYAファンタジー。