クラシックのリズム感、音程、発声が青春の不安定な気持ちを歌う曲にミスマッチ
★★☆☆☆
1994年録音。CDのライナーノートでご本人が書かれとるように、クラシックで名を成したご本人が青春を振り返り、若き日に聴き、友と歌った「うた」を歌おうとして居られます。
こうした郷愁は、こうした多くの人が知っている曲のいわば「カバー盤」にはプラスにもマイナスにもなる。クラシックは好きですけども、オペラや歌曲は好きになれん(日本人の多い。言葉のギャップもあるんかいな?)ワテには、これらの曲のうち、フォーク系のものは山本潤子さんや白鳥英美子さんのいわば「解釈」に余りに慣れておりますから、本盤には共感でけんかったです。「誰もいない海」「この広い野原いっぱい」「若者たち」「翼をください」「あなた」と、妙に鈍重なリズム感で、トホホ状態のパートも。
こうしてジャンルを超えるんでしたら、マイルス・デイヴィスがアナログ楽器を捨てて電子楽器ばかりのバンドを新設してロック(ただし、クラシックのようにおそろしく高度に構築されたロックではあったが)に乗り込んだように、鮫島はんもクラシックの歌い方を捨ててでも、こうしたポップス曲を歌うべきやったと考えますけども。
一方、ペギー葉山の「学生時代」、坂本九ちゃんの「見上げてごらん夜の星を」は原曲のアレンジがクラシックの歌曲と通じるところがありますから、優れたお歌かと感じました。「恋人よ」も出だしはええんですけども、次第に余りに音程や発声が安定しておるのに違和感が出てきます。去りそうな恋人への痛切な思いを歌われておるのに、これではオペラでも椿姫のビオレッタをジェシー・ノーマンが歌うようなもんではないでっしゃろか?