オーケストラ版は荘重さに特徴がある。ピアノ3重奏版からはしみじみとした感情がにじみ出てくる。そのほかブラス・アンサンブル版、ジャズ・コンボ版などが作られているが、注目はオルガン・ソロ版だ。歌謡曲的と言ったらいいのかカンツォーネ的と言ったらいいのか、布施明が歌ったら似合いそうな雰囲気を漂わせ、ドラマチックにメロディーが歌い上げられる。また、ピアノ・ソロ版のせつなさも心に残る。どこか陰のある寂しげな音楽がアルバム全体の基調だが、その中における色調の変化の幅は大きい。(松本泰樹)