短歌の世界にふれてみたいと思ったら,
本屋では昔ながらの短歌入門,歌人の書いた歌論などが手に入る。
しかし,短歌専門の人ではなく,文芸として短歌を見渡す本はなかなか見当たらなかった。
本書は歌人の生きた時代背景と,関川氏自身が感銘を受けであろう歌からなる文芸短歌批評である。
短歌は私性の強いものであるので,
歌人の人間を説明することに大きくページを割く本書のスタイルは,短歌から距離のある読者にとって歌に没入してゆくためのすばらしい道標を与えてくれる。
ただ,引用がはっきりしないため,どこからが関川氏の見解で,どこまでが他の歌論からひいて来たものなのかが明らかではない。
本書は読み物としては非常に面白いのであるが,上記の点で論としては惜しまれる。