漢字受容の歴史から、辞典の引き方までわかる
★★★★★
本書は、今まで編集者としてサラリーマンの傍ら著作を続けてきた著者による、
フリーランスとしての独立宣言の書でもある。
内容は、漢字の成り立ちから、日本における漢字受容の歴史、
そして、この1世紀の漢和辞典の編纂の歴史などに触れつつ、
漢和辞典の引き方を読み物として興味深く教えてくれる。
全編、堅苦しいところはなく、分かりやすく、用例を示しながら書かれている。
また、一つの辞典からではなく、著名な様々な漢和辞典の用例から説明してくれるのも魅力の一つだ。
実際の漢和辞典の引き方も、音読み、部首、画数について示してくれているが、
単調な書き方ではなく、読み物として飽きさせない。
本書の中で、著者は「良い文章の一つの典型は、その複雑なところを、
一本の線の上にきれいに整理して並べてくれるような文章だ」といっているが、
まさに自身で実践しているようだ。
全編から著者の漢字に対する思い、漢字研究の先人に対する尊敬の念が伝わってくる。
そして、自らの人生への思いを述べ、青春への決別をつづったあとがきがとても熱かった。