ジャンル「サスペンス」になっちゃってるが・・・
★★★★☆
「罪と罰」は随分前に日本語版を読んだのですが、一体どうやってドストエフスキーを100ページ足らずのリーダーズにまとめるのか気になって、怖いもの見たさに読んでみました。
ストーリーを簡略化し、登場人物の個性も随分希釈されてますが、なかなかうまくまとめていて読みだしたらとまりません。ドストエフスキーというと、思想家的な側面が強調され、「純文学」「世界の古典」なんて意気込んで読んでしまいがちですが、100ページ足らずのシンプルイングリッシュに書きなおしたことでストーリーラインが際立ち、「ドストエフスキーは希代のストーリーテラーでもあったのか・・・」と改めて確認させられました。ただし、登場人物の心情変化などをだいぶ端折っているので、ちょっと展開が唐突で、ただの殺人サスペンスと化している感は否めません。娘を娼婦にし、愛情ゆえの苦悩から酒に溺れるマルメラードフなどは、「ただの変なおじさん」で終わっている感もあります。が、英語を勉強しながらロシア文学の世界をチラリと覗いてみたい方にはなかなかの良書だと思います。これを読んだあとで完訳「罪と罰」を読む、なんてルートもありだと思います。ただし、これだけ読んで「ドストエフスキーってこんなもんか」と思うのは大間違い、というのは、彼に敬意を払う者としてつけ加えておきます。そのへんはまあ置いといて、リーダーズとしてはかなりおもしろかった(特に前半)のを評価して、星4つです。ちなみにブリティッシュイングリッシュで書かれていますが、独特の表現はたいして出てこないので、さほど意識せずに読めると思います。